2010年4月1日(木)「しんぶん赤旗」
米、奨学金制度を拡充
学資ローン 暴利の銀行を排除
【ワシントン=小林俊哉】オバマ米大統領が30日に署名し、成立した医療保険改革法修正法で、銀行が学資ローンをもうけ口にすることが規制されるようになりました。オバマ氏は同法の署名式の場所に、バージニア州アレクサンドリア市内のコミュニティー・カレッジ(公立2年制大学)を選び、学生から喝采(かっさい)を浴びました。
米国では近年、教育予算削減による学費高騰で、連邦奨学金制度だけに頼っては学業を続けることができず、学生は銀行の学資ローンを組まざるをえない状況が広がっていました。中には日本のサラ金並みの高利息ローンもあり、学業を終えた時点で数百万円もの負債を抱え込む若者もいるといいます。
新法は、学資ローンで暴利をむさぼってきた銀行界の横暴を排除します。ホワイトハウスによれば、学資ローン支援を名目に金融・銀行業界に流れていた政府補助金を大幅に削減し、今後11年間で680億ドル(約6兆3000億円)を節約する一方、返済の必要のない連邦給付奨学金を倍増するなど教育への支出を抜本的に改革します。
オバマ氏は同日、学生を前に演説し、「必要もないのに学資ローンの仲立ちをする銀行に、何十億ドルもの金を与えるなどということを改善するために、われわれは20年も努力してきた。これらの金は、学生が大学に通い、卒業するためにこそ使ってしかるべきものだった」と強調。同法の成立は、金融・銀行業界の強い圧力をはねかえしての成果だとして、「(医療保険改革、教育改革は)未来の世代のための二つの大きな勝利だ」と強調しました。
同法は、このほか、貸与奨学金の年間返済額の上限を年収の10%以内に抑えるなどの返済条件緩和措置や、高等教育機関の基盤整備などを定めています。とくにアフリカ系米国人(黒人)が多く通う教育施設の改善は急務とされてきました。
一方、野党・共和党側は、政府の奨学金拡大に対し、「政府による民間企業の乗っ取り」などと猛反発。秋の中間選挙を見越して、オバマ氏を「反米主義者」「社会主義者」などと公然と批判する動きを強めています。