2010年4月1日(木)「しんぶん赤旗」
八ツ場ダム入札の怪
「1社だけ応札」なんと4割
高値発注で税金ムダに
国土交通省発注の八ツ場ダム(群馬県長野原町)関連工事の受注業者を決める際、入札に参加した業者が1社だけの「1者応札」工事が約4割にのぼることが31日までにわかりました。1者応札では、無競争で高値発注となり、税金のさらなる無駄遣いにつながります。(矢野昌弘)
多数の1者応札が判明したのは、国土交通省が2009年に一般競争入札を行った72件の土木関連工事です。そのうちの27件(37・5%)が1者応札でした。
平均は2割程度
国交省発注の工事で1者応札の数は「おそらくは平均して2割程度」(馬淵澄夫国交副大臣、3月5日の衆院国土交通委員会)とされます。約4割になる八ツ場ダム関連工事は、突出しています。
二つのパターンがありました。最初から、参加する企業が1社だけのケースが17件。「除草工事」など、参入しやすい工事でも1社のみが応札する例がありました。
もう一つは、複数の業者が参加したものの、途中で辞退し、結局1社だけが応札するケースで、10件ありました。そのうちの一つ、「打越沢粗造成工事」は、典型例です。同工事の落札率(予定価格に占める落札金額の割合)は99・9%(1億6300万円)になりました。
この工事では、当初4社が参加を希望。ところが、1社が入札を辞退し、3社で入札を行いましたが、どの社も予定価格を下回らず、不成立に。さらに再入札を前に2社が辞退し、残った1社が落札したのです。(図参照)
これら1者応札での平均落札率は95・7%。不自然な入札について国交省の担当者は「電子入札なので、何社が応札しているかわからない仕組み。結果的には、1社だけだったとしても競争は機能していると思う」(公共工事契約指導室)としています。
しかし、東京都目黒区のように1社しか応募がない場合は、募集をやり直して1者応札を避ける自治体もあります。
公的調査が必要
1者応札にとどまらず、複数の社が応札した工事でも不自然さが目立ちます。落札した本命以外の業者の入札金額が、すべて予定価格を上回っている21件のケースです。
入札では、予定価格を超えた金額では落札できません。「本命」業者以外が、予定価格を上回る金額を入れることで、確実に「本命」が高値で受注することができます。過去の談合事件でも、高い落札率とともに他社が予定価格以上だったという事例がよくあります。
入札実態を調査した「八ツ場ダムをストップさせる千葉の会」代表の村越啓雄さんは「1者応札を認めない自治体もある。国交省も改めるべきだ。参加業者が少ない点など、談合が疑われる点もある。会計検査院や公正取引委員会に取り上げてほしい」と話しています。
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