2010年3月31日(水)「しんぶん赤旗」

主張

元秘書初公判

疑惑は首相自ら解明すべきだ


 鳩山由紀夫首相の政治資金疑惑にかかわって、政治資金収支報告書の虚偽記載で起訴された元公設第1秘書の初公判が開かれました。元秘書は起訴事実を認め、検察は禁固2年を求刑して裁判は即日結審、次回4月22日の公判で判決が言い渡される予定です。

 検察側は冒頭陳述で、鳩山首相の母親からの提供資金などが「個人献金」と偽装されていた構図は明らかにしました。しかし、虚偽記載が明らかになったのは、母親の提供資金などのごく一部です。疑惑の全面的な解明には、鳩山首相自身の国会などでの説明がいよいよ必要になっています。

提供資金の大半使途不明

 元秘書の起訴事実は、鳩山氏の資金管理団体「友愛政経懇話会」や選挙区の関連政治団体「北海道友愛政経懇話会」の会計事務の担当として、献金していない人などの名義を使った虚偽の「個人献金」を、政治資金収支報告書で届け出たというものです。

 検察は冒頭陳述で、元秘書が管理していた鳩山氏の政治資金には、「友愛政経懇話会」への実際の寄付やパーティー収入のほか、鳩山氏の国会議員としての文書通信交通費の一部や鳩山氏の個人資産などがあったが、それでは足りないので2002年ごろから鳩山氏の母親から月1500万円を「自由に使える資金」として受け取るようになったと指摘しました。政治資金収支報告書の作成はまず支出額を決めた上で、鳩山氏らの寄付が上限額を超えないようにしながら、手元の名簿などで個人の寄付やパーティー収入を大幅に水増ししたとしています。

 元秘書が虚偽記載した政治資金収支報告書は、時効にならない08年までの5年間で「友愛政経懇話会」で約3億5900万円、「北海道友愛政経懇話会」で約4200万円にのぼります。政治資金の収支を明らかにし、国民の「不断」の監視と批判の下に置く政治資金収支報告書の作成で、長期に、しかも巨額に上る虚偽を働いたことは、まさに重罪に値します。

 しかも、これですべての疑惑が解明されたわけではありません。母親の提供資金だけでも年間1億8000万円、5年間では9億円、02年からの7年間では12億6000万円にのぼります。鳩山氏の個人資産もあります。虚偽記載され、報告書を偽ったといわれる金額の2倍近くが、文字通り“使途不明”です。鳩山首相は再三国会で追及されても、裁判中だと、その使い道を明らかにしていません。

 元秘書が追及を受け、法廷で明らかにされているのはあくまでも「氷山の一角」です。鳩山氏に近い議員へ裏金としてわたっていたというマスメディアの報道もあります。そうした疑惑を含め、政治資金をめぐる疑惑に全面的に答えるのは鳩山氏の責任であり、たとえ裁判は結審してもあいまいにすますわけにはいきません。

自浄力ない政権信頼失う

 発足以来半年あまりを過ぎた鳩山政権への支持率が急落している大きな原因が、鳩山氏や小沢一郎民主党幹事長の政治資金への疑惑と不信にあるのは明らかです。

 政治資金をめぐり疑惑をもたれた政治家が自ら答えるのは政治の大原則です。自浄能力を発揮できない政治家や政党は国民の支持を失います。鳩山首相はこの事態に、きびしく向き合うべきです。





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