2010年3月29日(月)「しんぶん赤旗」
嘉手納ラプコン 31日に日本返還
那覇空港が管制へ
米軍が独占してきた嘉手納ラプコン(嘉手納レーダー・アプローチ・コントロールの略、嘉手納基地)による沖縄本島上空と周辺の航空管制業務が31日、日本へ返還されます。沖縄の日本本土復帰(1972年)から38年、日本の主権の及ばなかった進入管制業務が一部を残して日本に戻ります。
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18日の日米合同委員会で合意しました。返還により名称も沖縄進入管制空域(沖縄アプローチ)から那覇進入管制空域(那覇アプローチ)になります。
31日午前0時から同空域に出入する民間機や米軍機の管制業務は国土交通省の那覇空港管制所が行います。
嘉手納ラプコンは、嘉手納基地から半径90キロ、高さ6000メートルの空域と、久米島空港の半径55キロ、高さ1500メートルの空域の進入管制業務を嘉手納基地のレーダーで米軍が実施してきました。
那覇空港から離着陸する民間機は、嘉手納基地に離着陸する米軍機と航路が重なるため、約10キロの間、高度300メートルの低空で飛行するという「高度制限」を義務付けられています。
こうした米軍優先により、ニアミス(異常接近)の発生、低空飛行による乱気流発生時でのトラブルの可能性が指摘され、民間機の安全優先、燃料負担の軽減などから嘉手納ラプコンの早期返還が求められていました。
国土交通省は、返還後は地上と上空の管制を日本側で行うため、米軍機の飛行状況が早めに把握でき、米軍機の状況によっては高度制限せずにスムーズな着陸・上昇が可能としています。
解説
変わらぬ米軍優先
嘉手納ラプコンの日本への返還は「空の主権回復」、民間航空の安全確保という点で前進です。
しかし全面返還ではありません。国土交通省も認めるように高度制限の“緩和”は、あくまで嘉手納基地や普天間基地を離着陸する米軍機の飛行計画が予定されていない場合です。米軍機の飛行や作戦計画に支障のない範囲が前提なのです。
根拠となっているのが2002年5月に日米合意した嘉手納ラプコン返還条件の「運用所要」です。これは米側が日本側に示したもので「緊急事態発生時の対応など、合衆国軍隊が従来どおり任務を遂行するために必要な事項を示したもの」(赤嶺政賢党衆院議員の質問主意書への政府の回答)。「必要な事項」について政府は公表を拒否しています。つまり米軍を最優先するという取り決めです。
国交省航空局は返還により、那覇空港を離着陸する民間機(年間約10万6千回)のうち、どの程度が高度制限なしで離着陸できるかは「実施してみなければわからない」としています。
沖縄にある広大な米軍の訓練空域問題の解決も切実な問題です。同空域も米軍優先で、沖縄に向かう民間機は、天候悪化や乱気流発生による危険回避のためでも米軍の許可なしに進入、通過ができません。
これらの訓練空域問題は本土の横田(東京)、岩国(山口)でも同様です。航空関係者は、「嘉手納ラプコン返還はこれまでの運動の成果。そのうえで民間航空優先と安全確保のために、米軍訓練空域の削減、撤廃を求めたい。せめて当面の措置として国交省航空局の一体的な管理にしていくべきだ」(全運輸労働組合)としています。日米両政府はこれに応えるべきです。(山本眞直)
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