2010年3月29日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

ある?ない? どうなってる

家賃補助

給料安いのに… 税金の使い方の問題 地元定住に一役


 学校を出たら、正社員になり、会社の寮や社宅でお金をためて家を持つ―。そんな道が今、崩壊しています。若者に住まいを保障する地方自治体や世界各国の取り組みを取材しました。(染矢ゆう子、細川豊史)


東京・渋谷区

 東京都渋谷区では、2010年度から家賃助成制度を10年ぶりに復活させました。対象者は、(1)単身者(2)夫婦または一人親(3)子育て世帯で、助成額は月3万〜5万円です。

 昨年9月から、日本民主青年同盟渋谷地区委員会と日本共産党渋谷青年支部は、若者への家賃助成を求めて署名に取り組みました。自分のまわりや訪問活動などを通じて300人分の署名が集まりました。

 署名に取り組んだ青森県弘前市出身の女性(23)の給与は手取りで月13万〜14万円。家賃は月5万5000円で収入に占める家賃の割合は4割です。

 区内に住んで3年の木村さん。「給料日近くになると食料が少なくなります。こっちは野菜も高いし…。でもいいところだから住み続けたい。助成を申し込みます」と語ります。

 ただ、復活した家賃補助制度には改善すべき課題もあります。

 募集世帯は100世帯程度と少なく、所得制限もあり、区内に2年以上住んでいることなど厳しい条件があります。

 党渋谷地区委員会の田中正也副委員長は「駅前再開発や区議の海外視察など不要な事業をやめれば、助成世帯を増やすことができる。渋谷に住み続けたいという声を行政、議会に引き続き届け、税金の使い方を変えさせよう」と話しています。

岐阜・高山市

 一方、家賃の高い都心部だけでなく、地方でも日本共産党が若者への家賃補助を求め、実現しています。

 岐阜県高山市では、1996年から、地元に帰ってきた35歳以下の若者などに対して月1万5000円の家賃補助が3年間支給されるようになりました。毎年約200人が受けています。

 若者への家賃補助を求めてきた、日本共産党のいしま明博市議は「市内の家賃が高く、賃金は安いので、若者からは『助かっている』という声を聞いています」と話します。

 同市商工課は「若者の地元への定住に役割を果たしている」といいます。


若者おそう雇用・安全網の破壊

日本共産党国民運動委

高瀬 康正さんにきく

 日本共産党はどう考えるのか。住宅政策にくわしい国民運動委員会の高瀬康正さんに聞きました。

 どうして仕事も住まいも同時に失うようなことが起こるのでしょうか。

 二つの要因があります。

 一つは若者を中心にした雇用破壊です。労働法制の規制緩和で非正規労働者が増え、賃金の低下にとどまらず、常に失業の不安を抱えています。

 多くの若者は会社の寮住まいや住み込みで働いており、失業で住まいも同時に失う事態になったのです。

 二つは、人の営みの最低限の保障である居住の確保という「セーフティーネット」が崩壊していることです。

 バブル崩壊後の90年代から、親の扶養能力が低下し、親自身も自分たちの生活で精いっぱいという家族が増加しています。もはや、親に頼る“パラサイト(頼る)”は困難になっています。

 何よりも問題なのは、政府の住宅政策が一貫して持ち家取得支援で、低家賃かつ良質の住まいを増やすことや家賃補助などによる住居費軽減といった施策を怠ってきたことがあります。

 国の責任で、労働者派遣法の抜本改正による「正社員が当たり前の社会」をつくるとともに、若者が安心して入居できる公的住宅の供給と家賃補助の制度化が求められています。


制度充実のヨーロッパ諸国

 ヨーロッパ諸国では家賃補助制度が充実しています。

◆スウェーデン◆

子ども増なら補助も増

 低所得の若者(19〜28歳)は所得と家賃に応じた家賃補助(上限約1万4000円)が受けられます。子どもが増えると、補助も増え、広い家に住むことができます。

◆フランス◆

収入・家族・家賃により

 賃貸住宅に住んでいる人は収入や家族の人数、家賃などにより、住宅補助を受けられます。2008年は27%の世帯に2兆2000億円、1世帯あたり平均で年34万円の補助を行っています。

◆イギリス◆

1世帯あたり年60万円

 03年は16%の世帯に2兆4000億円、1世帯あたり平均で年60万円補助しています。

◆スペイン◆

最初は「敷金補助」貸与

 22〜30歳の年収273万円以下の若者は、月約2万6000円の「家賃補助」を最大4年間受けることができます。最初に借りる住宅のみ、約7万4400円の「敷金補助」が貸与されます。契約保証金が必要な場合、約1万4900円を受給することができます。

若者の自立促進 消費拡大にも

スペイン大使館 広報担当者にきく

 スペインで08年1月から始まった若者への家賃補助について、同国大使館の広報担当者に聞きました。

 「住居」という生活に必要な分野において補助制度を整えることで、若者の自立を促進することが目的です。スペインでは賃貸物件の割合が不動産市場の11%しかありません。購入物件と賃貸物件の割合のバランスを均衡させることも目的の一つです。

 1月現在、16万7000人を超える若者がこの補助金を受給しています。多くの若者がこの制度を利用し、より自立した生活を送っています。

 これまで、若者の収入に占める家賃費の割合は42%でしたが、家賃補助を受けることにより、収入に占める割合が24%となりました。若者の消費への刺激が期待されています。


お悩みHunter

高校1年、放課後の付き合い大変

  高校1年です。中学校のとき、ずっと不登校でした。いまの高校は居心地が良く、やっと友達もできて、3学期は休まずに通学しました。ただ、放課後の付き合いが大変です。ほかの子はバイトをしているのでけっこうお金があるみたいですが、私はまだバイトをする決意ができません。うまく断る方法ってないでしょうか?(16歳、女性)

友達に「事情」を話してみては

  高校では友達ができて、居心地もいいなんて最高ですね。ホッとしているあなたの安ど感がこちらにまで伝わってくるようです。

 中学では不登校だったのに、高校の3学期は休んでいないなんてすごいですね。でも、せっかく友達にも恵まれたのに、放課後の付き合いが負担になってきたのでは、確かに気が重いですよね。では、どうすればいいのでしょうか。

 私は、友達に「事情」を話してみてはどうかと思います。自分はバイトをしていないので、カラオケなどお金がかかる所へは毎回一緒に行くのは難しいこと、中学校では不登校でつらかったこと、だからまだバイトをする決意ができないことなどを率直に話してみてはどうでしょうか。友達なら、きっとわかってくれるはずです。

 また、高2になればクラスも替わります。あなたの“今”によりいっそう添ったかたちで、楽しくお付き合いができる新しい友人関係ができればいいですね。

 それに、放課後はいろんなことができる貴重な時間帯です。友達づきあいだけでなく、部活動や趣味、地域のボランティア活動などにも積極的に参加して、放課後の生かし方を多彩に充実させてみてはいかがでしょうか。

 今の友人に対して「断る方法」ばかり考えるのではなくて、もっと、前向きに柔軟に解決していければいいですね。


教育評論家 尾木 直樹さん

 法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。





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