2010年3月28日(日)「しんぶん赤旗」

主張

ギリシャ財政危機

金融規制が緊急の課題だ


 欧州単一通貨ユーロが、11年前の創設以来という信用不安に揺さぶられています。これに対処するため、ユーロを採用する16カ国の首脳が不安の震源地・ギリシャへの支援策で合意しました。

 緊急時の「最終手段」として、国際通貨基金(IMF)とユーロ圏諸国が一体で融資するとしています。実行されれば、IMFがユーロ圏の国ぐにに初めて介入することになります。

目白押しの緊縮措置

 リーマン・ショック後の世界的な金融・経済危機のなか、欧州でも各国が銀行支援などに多額の税金投入を行い、財政赤字が膨らんでいます。財政への懸念は、ギリシャのほかスペインやポルトガルなどにも広がっています。

 ギリシャでは昨年10月の政権交代後、前政権が巨額の公的債務を隠ぺいしていたことが明るみに出るなどし、2009年の財政赤字は国内総生産(GDP)比12・7%に膨れ上がっています。ユーロ圏で信用不安が広がり、ユーロの対ドル・レートは昨年末以来10%も下がりました。

 ユーロ圏加入には、財政赤字をGDPの3%以内に抑えることが条件です。欧州連合(EU)は、ギリシャが今年中に少なくとも8・7%にするよう求めています。

 ギリシャ政府は緊縮政策を矢継ぎ早に打ち出しました。3月の追加策では、付加価値税の2%引き上げをはじめとする増税、公務員の賃下げ、年金支給開始年齢の引き上げなどが目白押しです。

 国民生活を犠牲にすれば、ギリシャ経済をいっそう危機に追いやることにもなりかねません。パパンドレウ政権の支持基盤には労働組合も含まれますが、緊縮政策で国民生活の大幅な悪化は避けられず、労働者と国民は数次のゼネストで撤回を要求しています。

 首脳会議の合意でギリシャの債務不履行の懸念はひとまず薄れ、ユーロの下落にブレーキがかかりました。今後はギリシャが市場で資金を調達できるかが焦点になります。ゆくえは金融市場に委ねられた格好です。国債の信用不安がふたたび広がる可能性は消えていません。危機の根は深刻です。

 それだけに、金融投機への規制を強化する必要が浮かび上がっています。ギリシャ前政権の公的債務隠ぺいは複雑なデリバティブ(金融派生商品)を利用したもので、米投資銀行のゴールドマン・サックスなどが関与していました。

 これらの一部金融機関は国民生活の破壊をよそに、ギリシャ財政の粉飾で多額の利益を得たうえ、財政危機を利用した投機を通じてさらにもうけを上げています。

 ギリシャはいま、国債市場や外為市場でも投機にさらされています。パパンドレウ首相は投機がギリシャ国債の金利を記録的水準に押し上げているとして、今月訪米した際、オバマ米大統領に規制への協力を要請しました。

投機の手を縛る

 ギリシャ支援を決めたEU首脳会議は、EUや20カ国・地域グループ(G20)で、金融の規制・監督の強化を「急速に進展させる必要がある」と指摘しています。EUは金融取引税の創設に関する報告を近く取りまとめる予定です。

 投機の抑制には世界的な協力が不可欠です。日本でも規制強化に向けた議論をいまこそ本格化させる必要があります。





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