2010年3月26日(金)「しんぶん赤旗」

社会リポート

京都 学校のデジタルTV化

「ヤマダ」「大塚」独占受注

京商連“地元業者優先に”

政府方針にも反する落札


 国がすすめる学校へのデジタルテレビ導入で、京都では大手企業が落札を独占―。地元中小企業に配慮を求める政府方針にも反する事態に、中小業者から怒りの声がおきています。(細川豊史)


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(写真)入札課に要請する京商連の伊藤会長(右から2人目)と原田完日本共産党府議(その左)ら=18日、京都府庁

 問題となったのは、政府の「スクール・ニューディール」構想にもとづき1月〜2月に行われた府立高校と京都市立学校分のデジタルテレビ入札です。府では全69校分をOA機器商社大手の「大塚商会」(東京都千代田区)が独占(落札額は税抜き、3588万円)。市でも、家電量販店大手「ヤマダ電機」(群馬県高崎市)が校長・職員室用の全校分(同4417万円)と、小学校の電子黒板機能付きデジタルテレビ(同、計2億6514万2千円)をほぼ独占受注しました。

 大手による独占は、政府方針にも反しています。同構想についての塩谷立文部科学相(当時)名の文書(2009年6月)では、自治体に「地域の中小企業の受注機会の増大に努める」よう要請していました。

 「府と市が地元業者に限定せずに入札したのはいかん」と怒るのは、京都市中京区で電器店を営む男性(72)。「大手は商品を納めたらそれで終わり。地元の店のおじさんが蛍光灯1本でも走って行くという関係が学校にとっても安心なはず」と語ります。

裏にいじめ

 批判の声は教育現場からも。京都教職員組合の河口隆洋書記長は「民主府政時代は地元業者への配慮がありましたが、今は安さ優先。でも、学校に身近なお店のほうがアフターサービスなど、安心です」と話します。

 ヤマダ電機が予定価格の8割前後の低額で落札を独占した裏には、下請けいじめの実態があります。同社は落札後、市内の電器店に1台わずか2000円で設置を依頼。本来、1万円以下では採算がとれない仕事です。

 同社の下請け代金切り下げや支払い遅延は全国的に問題となっており、全国商工団体連合会は10日、中小企業庁に要請。同庁は下請代金支払遅延等防止法違反の疑いで調査する考えを示しました。

 京都商工団体連合会の坪井修事務局長は「自治体の入札が大手の安売り競争になっているのは問題です。適正な単価や賃金を保障する入札、公契約の確立は行政の責任です」と指摘します。

 京商連は府と市に、「府内、市内に本店を置く中小企業を優先する」地域要件を設ける入札の改善を繰り返し要請しました。

WTO口実

 府は、分割発注や地域要件を拒む理由に、3500万円以上の物品調達は大手でも参加できる一般競争入札とするというWTO(世界貿易機関)政府調達協定をあげています。

 しかし、福岡県ではデジタルテレビ入札の発注権限を各学校長に委任することで入札の単位額が小さくなり、協定が適用されず、地元業者の受注増大を可能にしています。

 日本共産党府議団は、府に対して一括入札をやめて地域要件を設けるよう申し入れ、議会でも「他府県の工夫にも学んでやるべきだ」と追及。山田啓二知事は「今後は分割発注できるように」検討すると答弁しました。

 京商連の伊藤邦雄会長は語ります。

 「これだけ中小企業が疲弊している中で、大手が独占するなどとんでもない。門ゆうすけ府知事候補も提案しているように、地元業者に優先発注する入札の改善が必要です。4月の府知事選挙で中小企業に冷たい府政を変えたい」


 スクール・ニューディール構想 政府が09年4月にまとめた「緊急経済対策」の一環で、学校施設の(1)耐震化(2)エコ化(3)ICT(情報通信技術)化―を進めるもの。自治体に臨時交付金を交付して行い、同年度補正予算に4900億円を計上しています。

 WTO政府調達協定 WTOの国際条約(1996年発効)で、政府による一定金額以上の物品、サービスの調達に国外企業が参加しやすくするように、一般競争入札とするなどの手続きを定めたもの。物品の基準額は3500万円以上。





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