2010年3月25日(木)「しんぶん赤旗」

主張

B型肝炎訴訟

命を大切にする政府の責任


 幼いころ受けた集団予防接種が原因で、自ら責任がないのに、何年もたってから肝硬変や肝臓がんに見舞われ、最悪の場合、命も奪われる―こうしたB型肝炎の患者が、救済を待ち望んでいます。

 ウイルスに汚染された血液製剤が原因で感染した薬害肝炎患者の勇気あるたたかいで、国会は昨年、肝炎対策基本法を成立させました。B型肝炎患者も救済をと裁判で訴えたのをうけ、札幌地裁は先日、原告と国に和解を勧告しました。鳩山由紀夫首相は施政方針演説で「命を守りたい」とのべました。政府も直ちに和解協議に応じ、救済に踏み出すべきです。

一日も早く和解の協議に

 B型肝炎訴訟の原告団はすでに、和解協議に応じることを決めています。政府は5月に予定されている次の裁判までに対応を決定するとしていますが、協議を遅らせる理由はどこにもありません。肝臓病患者は1日120人が亡くなっています。政府は直ちに和解のテーブルにつき、全面解決していくことが求められます。

 B型肝炎は、いったん感染すると長い間ウイルスが体内にとどまって長期間かけて肝臓をむしばみ、突然、がんなどの症状が悪化する病気です。全国で百数十万人の感染者がいるとみられます。

 感染は血液を介して起こることがわかっており、日本の場合もっとも深刻なのは、幼児期の集団予防接種で注射器を使い回したことによるものです。政府は注射針や注射筒の連続使用による危険性がわかっていたのに、戦後40年にもわたって使い回しを放置していたとしてその責任が問われました。最高裁は2006年、5人の患者について感染の原因が集団予防接種での注射器の使い回しであるとして、国の責任を認めました。

 にもかかわらず政府がその後も救済を渋り、和解協議にも消極的なのは、一人ひとりの感染が集団予防接種によるものかどうかを争う立場にこだわっているからです。「母子手帳」などで集団予防接種が認められる人しか救済しないとなれば、証明方法のない多くの患者・感染者にとっては、まさに切り捨てられることにしかなりません。国の責任を認めた、最高裁判決の精神にも反するものです。

 今回和解を勧告した札幌地裁は、「救済範囲をめぐる本件訴訟の各争点については、その救済範囲を広くとらえる方向で臨む」ことを明記しています。全国10の裁判所で起こされたB型肝炎訴訟には約400人が参加していますが、この2年間にすでに8人が死亡しています。鳩山首相が口にした「命を守りたい」ということばにうそがないのなら、政府は和解勧告を真剣に受け止め、できるだけ広い範囲の患者・感染者の救済に取り組む責任があります。

救済は待ったなしの課題

 注射器の使い回しは1988年まで続いていました。そのとき感染した最も若い人はいま20歳代で、本来ならもっとも希望にあふれる世代です。その人たちまでもが、今後いつまで、救済もなく苦しまなければならないのか。

 死の影におびえ暮らす人々にとって、救済は待ったなしです。和解協議で政府が責任を認め謝罪すること、患者への一時金の支給と恒久対策の実現など患者の立場に立った対策を講じていくことが、緊急に求められています。





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