2010年3月24日(水)「しんぶん赤旗」

主張

基本計画

展望持てる農業再生の方針を


 安全な食料と安定供給、豊かな農村社会の実現は、21世紀の日本社会の重要課題の一つです。

 日本の農業と農村は、豊かな条件を持ちながら、生産の縮小と食料自給率の低落、農業就業者の減少、高齢化、農地の減少、地域の衰退など、重大な困難に直面しています。歴代の自民党農政が、財界・大企業やアメリカの利益を最優先し、農産物輸入自由化を推し進め、価格政策を放棄して中小農家や産地を切り捨てる構造政策を進めてきたからです。

危機の根源に迫って

 食料・農業・農村政策を抜本的に転換することは、新しい政治を前に進めるかどうかの重要な課題です。鳩山由紀夫政権が、農家の戸別所得補償制度の実現と、「食料・農業・農村基本計画」の見直しを「農政転換の柱」とし、3月中には新しい計画を策定するとしているのが注目されます。

 「基本計画」は、1999年に施行された基本法で「食料、農業及び農村に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図る」ために策定することを政府に義務づけており、5年ごとに見直されます。今回は2回目の見直しで、政府は「過去の施策がどのように機能してきたか、また、政策の実効を期す上でどのような課題があるかを明らかに」し、今後取り組むべき施策の基本を整理するとしています。

 日本の農業・食料をめぐる今日の最重要課題は、危機の根源をあきらかにし、農業者が希望を持って農業を持続できる条件を、政治の責任で指し示すことです。

 生産衰退の要因である農家の所得減の回復、農産物の価格保障と所得補償の拡充、国内生産に打撃を与える輸入の規制、専業・兼業農家・生産組織など多様な担い手への応援、地域・農家の条件を生かした生産と農産加工、「地産地消」などによる地域農業の振興―などです。輸入自由化を最優先するWTO(世界貿易機関)の農業協定を改定し、食料主権の確立をめざすことも重要です。国内農業を壊滅させかねない、日米、日豪などの輸入自由化のための交渉を中止することも不可欠です。

 「基本計画」の素案がこのほど公表されましたが、今日の最大の問題として、農業所得がほぼ半減し農業の再生を困難にしていること、その最大要因が生産コストを大幅に下回る農産物価格にあることを指摘しています。そのため、大規模経営だけに資源を集中させてきた従来の政策を転換し、多様な担い手を対象にした戸別所得補償政策を実施するとしています。また食料自給率を10年間で50%に引き上げ、農業の多面的機能を評価し、生産・加工・販売を一体化させるなどの「6次産業化」で農業・農村の所得を増大させることを打ち出しています。

裏づけある政策が必要

 素案に盛り込まれたこうした内容は、農政の転換につながる可能性のあるものです。しかし、農業予算がさらに削られ、来年度から「モデル事業」として始まる戸別所得補償も水準が低く、地域性も考慮されないのでは、農業者に展望を与えることはできません。輸入自由化でも鳩山政権は「推進」の立場を変えようとしていません。

 「基本計画」を見直す以上、予算や国境措置をふくめ、農業再生の裏づけをもった内容にしていくことが強く求められます。





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