2010年3月22日(月)「しんぶん赤旗」
民主・生方氏解任
党内閉塞感の広がり示す
民主党執行部が、小沢一郎幹事長を批判した生方(うぶかた)幸夫副幹事長の解任を決めた対応をめぐって同党内で「言論統制ともとられかねない」(安住淳衆院安全保障委員長)、「(副幹事長は)党がよくなる方向で頑張るのが職責だ」(高嶋良充筆頭副幹事長)など“対立”がおきています。党内ごたごたの背景にあるのは――。
危機感と不満
民主党は昨年の総選挙後、それまで党内にあった政策づくりを行う政策調査会(政調)を小沢氏の主導で廃止し、「自由に意見を言ったり議論する場がない」と不満の声があがっていました。生方氏は、党政調復活を求める議員グループの中心メンバー。しかし執行部は政調復活には応じず、党役員会や政府への提案の機会などを認める「議員政策研究会」の設置にとどめました。
生方氏の行動の背景には、鳩山内閣の支持率が急落しているもとで、「(小沢幹事長が)辞めないかぎり参院選は戦えない」という危機感や「小沢支配」への不満があります。
しかし、「反小沢」を自認するある民主党議員は「確かに(支持回復への)特効薬は小沢辞任だ。しかし、誰が後任を務めるのか。そのことの方がいっそう大きな問題だ」と述べます。「小沢氏なしには党はまとまりを保てない」という不安です。
また、「自民党がまったくだらしない。党内にも小沢氏に対抗するだけの人材や明確な政策軸を示そうとする勢力はない。いわば、党外にも、党内にも『敵』が見えない。危機感は実は薄い」(議員政策秘書)という声もあります。
期待を裏切る
世論の民主党離れをもたらした最大の要因は、自公政治の転換をもとめた国民の期待への相次ぐ裏切りです。
沖縄県の米軍普天間基地問題では迷走の果てに「県内移設」の押し付けを強めています。さらに後期高齢者医療制度「廃止」公約の先送りと「新制度」での年齢差別の拡大、労働者派遣法改定では大きな抜け穴を放置、核密約調査では密約を密約と認めない欺まんなど、国民は鳩山政権の対応に失望の声を急速に強めています。
ある若手議員は「政権を取った途端、権力を振りかざし、業界への露骨なアメとムチで票を集めようとする。こういう姿勢に無党派の人々は一斉に引いている。カネで政治を動かす人たちの政策が、弱者のために向かうはずはない」と厳しい表情を見せます。
政調復活を求めるグループをはじめ小沢氏に批判的な議員も、「世論」を見て小沢氏の自発的辞任を「期待」するのが大勢です。
小沢グループの中堅議員は「財政も景気も普天間も迷走。『政治とカネ』の問題も抱えて、『一体この政権は何をやっているんだ』と完全に政治の潮目は変わっている。『反小沢』の連中も明確にものを言わない。景気は1年前より確実に悪くなっているが、政治の側に緊張感、現実感がない。まるで麻生内閣のようだ」と閉塞(へいそく)感をにじませます。
自民党政治の根本的転換の方向を示せず、民主党自身が行き詰まりを深めています。(中祖寅一)