2010年3月22日(月)「しんぶん赤旗」
職業訓練15万人利用 雇用促進住宅約14万戸運営…
雇用・能力開発機構の廃止法案
政府、今国会提出へ
「約束ほご」自治体批判
共産党、存続を求める
政府は「事業仕分け」第2弾に先行する形で、独立行政法人雇用・能力開発機構を廃止する法案の今国会への提出を目指しています。23日の労働政策審議会職業能力開発分科会に諮問される予定。同機構は約15万人が利用する国の職業訓練や失業者向けの雇用促進住宅約14万戸の運営などを行っており、公的セーフティーネットの後退につながる危険性を抱えています。
同機構は、自公政権下で2008年12月に職業訓練に特化するとして廃止が閣議決定されました。職業能力開発業務は高齢・障害者雇用支援機構に、その他の業務は廃止か勤労者退職金共済機構等に移管。全国に61ある職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)は都道府県へ移管し、雇用促進住宅は民間等への譲渡か廃止としました。
国の責任を後退
同機構廃止は国の責任を後退させ、民間や地方自治体任せにする狙いで進められてきました。小泉内閣時代の行革断行評議会(2001年)は、「職業訓練から撤退することにより、市場が開放され民業の活性化につながる」として廃止・解体を打ち出していました。
これに拍車をかけたのが鳩山政権です。昨年11月の事業仕分けで長妻昭厚生労働相は職業訓練事業の移管の際には予算を半減し、職員を約2割削減すると発表。さらに、全国83カ所ある地域職業訓練センターの廃止を昨年末になって自治体に通知しました。
一定の利用者があれば存続するとの約束もほごにされたため北海道や青森、岩手、栃木、大阪などの各自治体から見直しを求める声が上がっています。政府に対する要望書で「訓練機会の乏しい地域における人材育成に極めて重要な役割を担っており方針転換はあまりにも唐突」(北海道)、「廃止した場合には有為な職業人の育成に極めて大きな影響を与える」(青森・岩手)と批判しています。
撤回を求め交渉
日本共産党の大門みきし、紙智子両参院議員は2月25日に計画の撤回を求め厚労省と交渉。大門氏や高橋ちづ子衆院議員は国会質問で存続を求めました。
雇用促進住宅は、「派遣切り」で職も住まいも失った人に再就職までの住居として提供され、役割が改めて注目されています。
日本共産党は昨年の総選挙で「雇用促進住宅の全廃方針を撤回し、居住権を保障します」と掲げ全廃決定を撤回するよう求めてきました。
存続を求める運動を受けて自公政権は09年3月、廃止決定済みの住宅の活用と、「少なくとも3年間」は入居者の追い出しはしないと約束しました。雇用促進住宅の廃止・民間譲渡はこうした経過も踏まえないやり方です。
民主党はマニフェスト(政権公約)で「職業能力開発制度の抜本強化」を掲げ、社民党は同機構の廃止計画にも「国の責任を放棄する」と批判していました。こうした言明にも反する姿が問われます。(藤川良太)
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