2010年3月21日(日)「しんぶん赤旗」
主張
「国会改革」法案
与党のゴリ押しは許されない
民主党が、小沢一郎幹事長の強い意向で進めてきた「国会改革」法案を最終的に取りまとめ、あくまでも今国会で成立させようと策動しています。
法案は、官僚の国会答弁を禁止するなど国会の機能を弱めるもので、とくに内閣法制局長官を「政府特別補佐人」からはずすのは政府による解釈改憲拡大の危険があります。しかも、国会のルールにかかわる法改正を野党との話し合いも進まないのに、与党だけで国会に押し付けようとしているのは重大です。民主主義を破壊する法案の与党によるゴリ押しは、絶対に許すわけにはいきません。
一方的に押し付ける
民主党など与党3党は昨年末すでに「国会改革」法案について合意しており、年明けの与野党の会談でその内容を持ち出そうとしました。しかし、その後与野党の話し合いはいっこうに進んでいません。それなのに、民主党は17日の政治改革推進本部の会合で法案の「最後の成案」(小沢氏)を決め、今国会での審議・成立を改めて確認しました。民主党は政府が提出した「政治主導確立法案」と並行で審議を進めたいとしており、今後の審議日程などは不明ですが、事態が重大な段階を迎えていることは軽視できません。
もともと国会法など国会運営のルールは、衆参議長のもとで国会を構成する各会派が白紙から時間をかけて議論し、一致したものを実施すべきです。与党が一方的に法案をまとめ、押し付けるなどというのは許されません。
しかも民主党など与党が持ち出した「改革」の中身は、問題が山積しています。官僚などに答弁を求めている「政府参考人」制度の廃止や、内閣としての憲法解釈を担当する内閣法制局長官の「政府特別補佐人」からの排除は、国会の行政監督権や国政調査権を低下させる恐れがあります。与党3党は、官僚の答弁を認めない代わり、内閣法制局長官を含む官僚などから意見を聞く「意見聴取会」を国会に新設するとしていますが、ただ「聞き置く」だけの場になりかねません。
なにより問題なのは、法制局長官の答弁「禁止」です。内閣法制局は、憲法違反の自衛隊の創設やその海外派兵に内閣として“お墨付き”を与える一方、集団的自衛権の行使などあからさまな憲法違反には、憲法の規定をまったく無視することはできないとの態度をとってきました。国連の決定があれば自衛隊の海外派兵も可能だと独自の憲法解釈に立つ小沢氏は、ことあるごとに内閣法制局を批判し、法制局の廃止や長官の国会答弁禁止を要求してきました。小沢氏が音頭をとって言い出した「国会改革」が、解釈改憲の拡大につながる危険は明白です。
強権的国家づくりの狙い
国会は唯一の立法機関であるとともに、国権の最高機関です。「政治主導」の口実で、行政機関の活動や政府の憲法解釈についての追及をやりにくくしようというのは、政府や与党の思うままに国政を牛耳る、強権国家づくりの動きにつながる危険なものです。
「政治家同士の討論を活発にする」だけなら、国会法を改定しなくても、現行法の下でもできます。危険な「国会改革」法案のゴリ押しを許さない、国民の世論と運動が急務です。