2010年3月18日(木)「しんぶん赤旗」
主張
日銀金融緩和
「需要不足」の根源にメスを
日銀が追加の金融緩和策を決めました。
昨年12月に日銀は、新たに実質ゼロの固定金利で期間3カ月の資金を潤沢に金融市場に供給する、「広い意味での量的緩和」(白川方明総裁)策を導入しています。
今回は、その供給額を「10兆円程度」から「20兆円程度」に倍加します。
ゆきづまりのしわ寄せ
今回の措置について日銀は「日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰する」ための「中央銀行の貢献」の一環だとのべています。
これは、金融緩和の一般的な解説にすぎず、今回なぜ追加の金融緩和に踏み切ったのかについての明確な説明はありません。
「デフレ克服に向けて頑張っていただかなければならない」(鳩山由紀夫首相)など閣僚や自民党などが再三、日銀に強い金融緩和の圧力をかけています。鳩山政権が策定した「新成長戦略」は自公政権の「成長戦略」の焼き直しにとどまり、財政面からも経済政策のゆきづまりは深刻です。そのゆきづまりのしわ寄せを日銀の金融政策にかぶせるやり方です。
もともと日銀は、「持続的な物価下落」は「需要の弱さの結果」であり、「結果ではなく根本的な原因に働きかける」ことが最も大事だと主張していました(白川総裁の記者会見、昨年11月)。
今月講演した日銀の審議委員は「デフレ」の原因を、さらに具体的に説明しています。「所得の減少が続く中で、家計は節約志向を強めており、企業はこれに価格引下げで対応しています」「消費の根本的な弱さが、物価形成上、下押し圧力となっています」
「デフレ」の原因は「需要の弱さ」、特に「消費の根本的な弱さ」にあり、根源は「所得の減少」だという指摘は当を得た分析です。
国際的に見ても、経済危機に見舞われているほかの先進国では「デフレ」は起きていません。日本とほかの先進国との大きな違いは、雇用者報酬、つまり働く人の所得です。この10年で、先進7カ国のうち日本を除く6カ国は雇用者報酬を2割から7割増やしているのに対して、日本だけが減らしています。
この間、大企業の利益は倍増し、ため込み金である内部留保が90兆円近くも膨らみました。一部の大企業が富を独り占めにするシステムが、働く人の所得を減らし、消費を冷やして国内需要を弱め続けてきたことが浮き彫りになっています。
経済の正常な流れを阻害するシステムは、日本経済の健全な成長をも止めてしまっています。社会保障への不安とともに、日本経済の将来に対する閉塞(へいそく)感は、いっそう国民の不安を高め、心理的にも消費を圧迫しています。
苦い経験を繰り返すな
自公政権と同じ「日銀頼み」で経済危機を打開できないことは歴史が証明しています。日銀も、ずるずると金融緩和を進めた結果、余剰資金が投機市場に流れて暮らしと経済をかく乱した苦い経験を繰り返すべきではありません。
一部の大企業が富を独り占めにするシステムを是正し、大企業の内部留保と利益が国民の所得に回る仕組みに改めること―。それなしには経済危機を本格的に打開することも、日本経済の明日を開くこともかないません。