2010年3月17日(水)「しんぶん赤旗」

主張

月例経済報告

「自律回復の芽」が育つには


 政府が3月の月例経済報告で、景気の基調判断を8カ月ぶりに「上方修正」しました。「景気は、持ち直してきている」という表現に「着実に」を加え、上向きの評価を強めました。

 菅直人財務・経済財政相は「国内民間需要の自律的回復の芽が出つつある」とのべています。しかし、経済の実態、特に国民の暮らしは「着実に持ち直し」などと言える状態ではありません。

企業収益は改善しても

 11日に発表された昨年10〜12月のGDP(国内総生産)の2次速報では、実質で家計消費が3期連続で増えました。設備投資が7四半期ぶりに増加し、輸出の増加とともにGDPを押し上げました。

 数字はプラスになりましたが、中身を見ると「着実」には程遠い実態が浮き彫りになっています。

 消費のうち自動車や大型家電など耐久財は大幅プラスになった一方で、それ以外の非耐久財とサービスは減少しています。

 「エコカー」「エコポイント」によって耐久財の消費が大幅に押し上げられたものの、そのしわ寄せが耐久財以外の消費に及んでいます。何より、消費の大もとの雇用者報酬の減少が続いています。

 耐久財の消費は「補助があるうちに買っておこう」という需要の「先食い」で増えているにすぎません。所得の減少が続く現状を考えれば、むしろ「先食い」一巡後の落ち込みが心配されます。

 かつて世界経済をけん引したアメリカの消費は、バブルの崩壊で簡単に復旧できません。国内需要の基盤である家計所得が回復しない限り、民間企業の設備投資も本格的な回復は望めません。

 月例経済報告で最も明確に「上方修正」されたのは企業収益の判断です。2月までは企業収益の大幅減少の「テンポは緩やかになっている」という評価でしたが、今月は「企業収益は、改善している」とはっきりのべています。

 これを受けて月例報告は「雇用情勢に厳しさが残るものの、企業収益の改善が続くなかで…景気の持ち直し傾向が続く」としています。ここには“雇用や暮らしはどうあれ企業収益が増えれば、いずれ景気は回復する”という旧来型の「成長」路線の考え方がくっきりと表れています。

 昨年末の政府の「新成長戦略」は、自公の「構造改革」が「選ばれた企業のみ」に富を集中させ、中小企業の廃業増と所得・需要の低迷を招いたと分析しています。この「診断」は正しかったにもかかわらず、鳩山政権は問題を是正する適切な処方せんを打ち出せず、目の前の景気判断にも生かすことができていません。

家計を土台から温めて

 財務省によると昨年10〜12月の企業の経常利益は前年同期と比べて倍加し10兆円を超えました。雇用と下請けへのしわ寄せで経費を削減し、経済対策の恩恵を独り占めにして一部の大手製造業が利益を大幅に増やした結果です。大企業の回復が家計に及ぶどころか、その流れを大企業がせき止めて利益を増やしています。「自律回復の芽」が出る余地はありません。

 こんなやり方を放置しては家計の所得も内需も回復できず、企業業績も維持できません。大企業がためこんだ巨額の内部留保と利益を雇用と中小企業に還元させ、家計の購買力を土台から温める政策への抜本転換が求められます。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp