2010年3月15日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
車ない私の命綱
都市や過疎地を問わず、地域住民の“足”を確保することは、暮らしを守るうえでも重要な課題になっています。市のコミュニティーバスを全廃する計画に反対運動が広がっている大阪市と、福井市の乗合タクシーを紹介します。
“赤バス”全廃 待った
大阪市
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大阪市には、区役所や病院などをきめ細かく回る市運営の“赤バス”というのがあります。100円均一、22〜27人乗り、車いすでも利用できるノンステップで、2000年5月から市内5行政区で試行され、現在は21行政区27路線を走っています。
高齢者や体の不自由な人たちのなくてはならない移動手段として利用されている地域密着型のコミュニティーバスです。そのように住民から親しまれているのに、大阪市はすべて廃止しようと動きをすすめています。
大阪市は、2009年6月、「経済性も公共性も著しく低い」ことを理由に「市営バス事業の改革プラン『アクションプラン』案」の中で、10年度に廃止決定し、11年度からの廃止計画を発表しました。
■連絡会結成
これにたいし、09年12月に「赤バスの存続を求める市民連絡会」が結成され、市役所前や区役所前でのいっせい宣伝行動や市民集会、対交通局交渉などに取り組み、「赤バス」存続の請願署名を市議会に提出しました。「暮らしになくてはならない赤バスは廃止しないで」と、反対の声が広がり、市の計画を修正させ、結論を延期させました。
日本共産党大阪市議団は、議会では一貫して「公共交通の役割を果たせ」と論陣を張り、「名古屋市や仙台市並みに適切な運営補助が行われていれば、避けられた赤字であり、大幅な黒字の地下鉄とバスを一体で見れば、バス路線の維持はできる」と提案し、市長に方針の転換を求めました。
「市民連絡会」は、市議会の民主党や自民党、公明党と懇談し、存続を要請してきました。市民の不満と運動に押され、これらの会派からも「赤バス」の存続を求める声が出始めました。
■結論を延期
大阪市は、今年2月15日に「市営バス事業の改革プラン『アクションプラン』案」改訂版を発表。“赤バス”存廃の結論を12年3月まで延期することが明らかになりました。「福祉の赤バス、市民の足を守れ」の市民の世論と運動、日本共産党市議団の議会での論戦などの成果です。
改訂版では、「現状の赤バスサービスは廃止」とする一方、「“赤バス”の利用者増を図るため目標値を設定し、地域とともに利用促進に努め、利用者数が一定基準に達したらバスサービスを維持する」としています。
「市民連絡会」の是枝一成事務局長は、「“赤バス”の存続は、障害者やお年寄りをはじめ市民が安心して暮らせる街づくりにつながるものです。より一層利用しやすいものにするために地域からの提案づくりをすすめたい」と話します。(大阪・生島貞治)
乗合タクシー 1万人利用
福井市
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1世帯当たりの自動車保有率が全国一の福井県では、交通手段として自動車の割合が福井市で74・9%を占めています。これからさらにすすむ高齢化への対応や温暖化防止策のうえでも公共交通の比率を増やそうと「都市交通戦略」の計画を定め、取り組みを進めています。
■過疎地の声
公共交通空白地域の問題は以前から起きており、1997年に路線バスが廃止された本郷地区では「なかなか病院に行けない」との高齢者の切実な声が出ていることを私(日本共産党の西村きみ子議員)が議会で繰り返し要求し、乗合タクシー(運転手を含め10人乗り)が実現しました。
2003年から本郷ルートと高屋ルート(1コース1日6往復、運賃1回200円)で祝日を除く月曜日〜土曜日に運行されています。現在では、2ルート合わせて年間のべ約1万人が利用しています。
利用者の声は「病院に行くために本当に助かっています」「車に乗れない私にとっては命綱です」など大変喜ばれています。一方、乗る人が少なくなると乗合タクシーが廃止になるのではと心配する声も聞かれます。過疎地の高齢者にとって命綱となっている乗合タクシーの継続は住み続けるために不可欠の事業となっています。
近年、農山漁村集落の中で公共交通を望む声が広がっています。高須町の住民から本郷地区の乗合タクシーを延長してほしいという要望を鈴木しょうじゅ議員が受けて、聞き取り調査や署名に取り組みました。昨年には自治会から正式に要望書が出されて、日本共産党県委員会や党福井市議団も市や県に対策を要望してきました。
■新たな事業
市や県が調査、検討をすすめてきた結果、2010年度から県が「自治会等輸送モデル活動事業」、市は周辺市街地や農山漁村地域の公共交通空白地域で「地域コミュニティバス運行支援事業」の実施を打ち出しました。
県の事業は地域が運営するための車両購入費への補助(県3分の2、市3分の1と保険料)を行います。市の事業は地域住民の合意が得られた地域について、運行協議会を設置し、公募により選定した運行事業者と連携、協力して運行、利用計画をつくり、市からの上限800万円の補助を受けて実施することになります。運賃は均一200円以下に設定されます。
また、この事業は過疎化のすすんでいる農山漁村だけでなく周辺市街地でも路線バスの利用圏域(バス停から半径300メートルの範囲)に含まれない地域も対象となります。
日本共産党福井市議団は住民のみなさんと協力して頑張ってきた成果として評価しています。この事業が過疎地などで住み続けられるための施策として期待されています。(福井市議・西村きみ子)