2010年3月14日(日)「しんぶん赤旗」
高校無償化 朝鮮学校適用
言明避ける鳩山政権
道理ない“除外”や“先送り”
高校無償化法案が12日に衆院文部科学委員会で可決されましたが、無償化を朝鮮学校に適用するかどうかをめぐり、新たな動きが起きています。
鳩山由紀夫首相は11日、朝鮮学校の課程が「高校に類する課程」かどうかを判断する「客観的な基準」づくりのために、「ある程度時間がかかる」と発言。平野博文官房長官は12日の記者会見で、文科省に設ける「第三者委員会」で検討する考えを示したのです。
政府・与党は新年度から高校無償化を実施する方針ですが、朝鮮学校への適用判断は4月以降に先送りされる恐れがでてきました。
今回の動きは、教育の機会均等や民族・国籍などでの差別の排除という課題で政府の姿勢の根本が問われる問題についての判断を、鳩山政権が「第三者委員会」という“外部関係者”に押し付けようとするものです。
しかし、朝鮮学校の高校課程が「高校に類する」ことは、国公立大学を含む大半の大学が卒業生の受験や入学を認めていることをみても明白であり、同学校の無償化からの除外や判断の先送りには道理がありません。朝鮮学校は、高校野球や全国高校サッカー選手権にも受け入れられています。
重大なのは、この差別問題がすでに国内の教育問題にとどまらず、世界から注目される国際問題に発展していることです。
韓国国内の約50の民間団体は4日、在日韓国・朝鮮人の生徒が新たな差別を受けかねないとして、ソウル市内で朝鮮学校除外反対の集会を開き、無償化適用を求める声明を採択。国連の人種差別撤廃委員会の会合(2月24・25両日、スイス・ジュネーブ)でも、複数の委員が人権保護の観点から懸念を表明しました。
日本政府は、「人種差別撤廃条約」を1995年に批准し、国や地方自治体などのすべての公共機関が人種や民族などで差別する行為や慣行を行ったり、差別を扇動、助長したりしないと約束したはずです。鳩山政権が朝鮮学校除外を口にし、判断を先送りすることは、政府がみずから同条約に違反することにほかなりません。
鳩山首相自身、1月の就任後初の施政方針演説で「すべての意志ある若者」に教育の機会を与えると表明。国境を越えた交流強化のために「東アジア共同体の中核を担える人材」の育成をめざすと表明しているのです。
国際人権規約の中等・高等教育の無償化義務条項をいまだ留保する日本にとって、今回の高校無償化は教育の機会均等という世界の流れに追いつくチャンスであるはずです。にもかかわらず、朝鮮学校を除外するならば、逆に民族間の新たな差別や対立、怨恨(えんこん)をつくりだし、「東アジア共同体」づくりに障害をもたらすことになります。(林信誠)
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