2010年3月14日(日)「しんぶん赤旗」
主張
春闘の大詰め
内部留保と利益の還元めざし
ことしの春闘が、鉄鋼や自動車、電機など大企業の集中回答日(17日)を控え、最初のヤマ場を迎えようとしています。
企業側が賃上げどころか定期昇給さえ抑えようとし、大企業の労働組合のなかには賃上げ要求を見送るところもありますが、労働者にとって雇用を守るとともに切り下げられてきた賃金を引き上げることは、人間らしく働き、暮らしていくうえで欠かせない要求です。大企業のためこんだ内部留保と利益を国民の暮らしに還元させることは、「ルールある経済社会」を築くうえでも不可欠です。
大企業の「ひとり勝ち」
日本の経済と国民の暮らしはいま、働く人の収入が落ち込み、消費も伸び悩み、失業や倒産の統計も最悪水準を続けるという深刻な状態です。政府が最近発表した昨年10〜12月期の国内総生産(GDP)の改定値でも、昨年1年間の日本のGDPは名目で前年に比べ6・1%落ち込み、なかでも全体の約6割を占める個人消費は3・2%、住宅建設は17・0%もの減少となっています。
日本の場合深刻なのは、世界的な経済危機の影響を受けているだけでなく、世界の主要国のなかでもっとも経済の落ち込みが激しい国になっていることです。この10年でみても日本だけが成長が止まり、国民1人当たりのGDPではどんどん順位を下げて、いまやイタリアにも抜かれています。
経済の成長が止まっても、大企業の利益や内部留保は増え続けています。資本金10億円以上の大企業の経常利益はこの10年で15兆円から32兆円に増え、内部留保は142兆円から229兆円に急膨張しました。その半面、雇用者報酬は279兆円から253兆円に減少しました。大企業が利益を上げても働く人の収入は増えず、経済も成長しない異常な姿です。世界の主要国で、国民のふところがどんどん貧しくなっているのは日本だけです。
日本共産党の志位和夫委員長が11日の各界との経済懇談会でも報告したように、ごく一握りの大企業が富を独り占めする、この仕組みを改革しない限り、日本経済にも国民の暮らしにも、明日はありません。その原因を作っている、企業にとって安上がりな「非正規」への労働の置き換え、リストラと賃下げ、下請け中小企業の単価の買いたたきなどをやめさせることは、急務中の急務です。
ことしの春闘で雇用の破壊をはねかえし、生活できる賃金を実現していくことは、労働者の暮らしを守るとともに、大企業「ひとり勝ち」の経済社会を改革していくうえで大きな意義を持ちます。鳩山由紀夫政権に対する労働者派遣法抜本改正実現などのたたかいと一体で労働者の暮らしと権利を守ってたたかうことが求められます。
国民春闘の前進・発展を
全国の労働者がいっせいに雇用の拡大と賃上げの要求を掲げ、国民各層とも手を結んでたたかう国民春闘は、日本の労働運動の長い伝統です。そのなかで、沖縄の米軍普天間基地を撤去させるなど、平和と民主主義の課題を前進させることも重要です。
いま労働運動でも、組織の違いをこえて、一致した要求を掲げた共同が前進しています。この流れをさらに広げ、国民春闘の前進に力を尽くそうではありませんか。