2010年3月12日(金)「しんぶん赤旗」
主張
普天間「移設」
歓迎されぬ基地 撤去しかない
鳩山由紀夫政権の政府・与党が、県民から撤去を迫られている沖縄県宜野湾市の米海兵隊普天間基地の「移設」先として、沖縄県内や日本国内など複数の候補地をあげて大詰めの検討を進めています。これに対し、どの候補地からも強い反対の声があがっています。
日常生活さえ妨げる騒音被害や墜落などの危険をもたらし、米兵犯罪の増加も予想される米軍基地の「移設」を歓迎する人はいません。もともと米海兵隊は世界各地の戦争に“殴りこむ”ための部隊で、日本の国民を守るためではありません。国民に歓迎されない基地は、撤去するしかありません。
騒音と危険性広げるだけ
政府・与党は、8日の沖縄基地問題検討委員会に社民、国民新両党の「移設」案が提出されたのを受け、委員長の平野博文官房長官の案とあわせて検討を進め、月末までには政府・与党案を固めるとしています。その後、5月末を期限に、「移設」先やアメリカとの交渉を進める予定です。
そもそも普天間基地を含む沖縄の米軍基地は、アメリカが不当に県民の土地を奪って建設し、半世紀以上にもわたって返還要求を拒否して居座ってきたものです。それを撤去するからといって「移設」先を求めるなどというのはまったく道理がありません。「移設」先を探すこと自体間違っています。
しかも、海兵隊が「移設」先に移れば、住民に新たな犠牲を背負わすのは確実です。平和の中で暮らしたいというのは国民の基本的な権利です。沖縄県内の候補地にせよ、県外・国内の候補地にせよ、新たな被害や危険性の拡大に住民の反発が広がるのは当然です。
沖縄県内では、名護市の米軍キャンプ・シュワブの陸上部などが候補にあがっていますが、騒音被害や危険性を県内に「たらいまわし」するのは、沖縄県民の異常な負担を軽減するとしてきた鳩山政権の公約にも違反しています。住民はもちろん、沖縄県や名護市の議会や首長がこぞって反対を表明するのは当たり前です。
県外・国内では、静岡県の東富士や青森県の三沢、長崎県の大村など、たとえ現在、米軍基地や自衛隊基地があるところでも、歓迎しているところはありません。住民が歓迎する「移設」先を見つけるなど、土台無理な話です。
かつてアメリカのラムズフェルド国防長官も、「われわれは、本当にわが軍を望まれているところに(基地を)置きたい」「歓迎されていないところにはいたくない」と発言したことがあります。この言葉通りなら、いまあがっている候補地で、普天間基地を「移設」できるところはありません。「移設」ではなく、無条件で撤去することこそ、唯一の実現可能な道です。
住民に我慢押し付けるな
鳩山政権が、住民に歓迎されない米軍基地を、「日米同盟のため」とか「日本を守るため」だとかいって、国民に我慢を押し付けようとしているのは論外です。
沖縄の米海兵隊は日本を足場にして世界各地に出かけ、アメリカの戦争の“殴りこみ部隊”として役割を果たすのが任務で、日本を守る軍隊ではありません。
日本を戦争に巻き込む危険な海兵隊の基地のために国民に我慢を強いるなど、まともな政府がやることではありません。政府は「移設」の企てを断念すべきです。