2010年3月11日(木)「しんぶん赤旗」

主張

高校無償化

学ぶ権利をすべての子どもに


 国会で法案審議されている高校の無償化について、政府が朝鮮学校を除外する可能性を示したことが議論を呼んでいます。除外しないよう求める声は、朝鮮学校の教員、生徒・父母はもちろん民間団体や地域住民に広がり、人種差別撤廃委員会など国際的にも表明されています。

朝鮮学校を排除しない

 すべての高校生に学ぶ権利を保障するための無償化が、その精神に逆行して新たな差別を生むことは許されません。日本が批准している国際人権規約や子どもの権利条約にも反します。無償化の適用は法律成立後に文科省が省令で決めます。政府が適正に対処するよう監視する必要があります。

 国内に居住する外国人の子どもたちの教育を保障することは、国際社会の一員としての日本の責務です。とりわけ朝鮮学校で学ぶ在日韓国・朝鮮人の子どもたちは、国内で生まれ居住し、多くが将来も日本社会で生活していくことからも、政府が教育を保障するのは当然です。

 その際、子どもの民族的同一性を尊重することが重要です。子どもの権利条約は教育において、父母や子どもの文化的同一性、言語や価値観、居住国と出身国の国民的価値観などへの尊重を育成するとしています。

 これらの点から、朝鮮学校などの民族学校は子どもの教育に不可欠の役割を担っていることを認め、少なくとも日本の私立学校と同等に扱うべきです。高校無償化を、朝鮮学校の生徒にも適用すべきことはいうまでもありません。

 鳩山由紀夫首相は、朝鮮学校に関与する北朝鮮と国交がないことを理由に、朝鮮学校の教育内容を「調べようがない」として、除外を示唆しました。朝鮮学校が得体の知れない組織でもあるようにいうのは、実態をみない暴論です。

 日本の小・中学校、高校にあたる朝鮮学校は、朝鮮史や朝鮮語の授業を除いて、日本の学習指導要領に準拠したカリキュラムをとっています。朝鮮学校は都道府県に教育内容を届けており、都道府県は朝鮮学校に一定の助成をしています。ほとんどの大学が朝鮮高級学校卒業生に日本の高校卒業生と同等の受験資格を認めています。

 政府は朝鮮学校に長年差別的な政策をとってきました。自治体の助成や大学受験資格の実現には、在日の人びとと日本国民の粘り強い運動がありました。

 今年は日本による「韓国併合」から100年です。朝鮮学校で学ぶ在日韓国・朝鮮人は、日本の植民地支配下で徴用されるなどして、やむを得ず日本に渡った人びとの子孫です。日本政府には植民地支配の反省に立って、将来にわたって隣国と友好関係を築く努力が不可欠です。在日の人びとへの政策、朝鮮学校への政策はその重要な分野です。

拉致は理由にならない

 高校無償化での朝鮮学校排除の議論は、北朝鮮による拉致問題を理由にした一部閣僚の反対表明に始まります。朝鮮学校が北朝鮮と関係があるといって、拉致問題に責任のない子どもたちに報復まがいのことをするのは論外です。

 鳩山政権は、日朝平壌宣言に基づいて「拉致、核、ミサイルの諸懸案を包括的に解決する」としています。朝鮮学校排除はその立場にも反するものです。



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