2010年3月10日(水)「しんぶん赤旗」
朝鮮学校 なぜ無償化除外
どこにもある高校の風景
国会で審議されている「高校無償化」法案。鳩山由紀夫首相が「教育内容が見えない」と発言するなど、朝鮮高校を同法案から除外する動きが出ています。本紙には、東京朝鮮中高級学校の生徒から「私たちの学校を除外しないでください」「経済的問題がなければ一緒に進学できた友達がいました」と切実な投書が寄せられています。東京都北区にある同校を訪ねました。(栗原千鶴)
「こんにちはー」。校庭でサッカー部員がぺこりと頭を下げてあいさつします。楽しそうにおしゃべりしながら体育館に向かうのは新体操部員。教室の机の上にはカラフルなサインペンが入った鉛筆たてが置かれ、生徒にカメラを向けると恥ずかしがったり、あわてて髪の毛を直したり。
それはどこにでもある高校の風景、高校生の姿そのものでした。
日本国籍の生徒も
日本語の授業では、推敲(すいこう)を勉強中でした。横山秀夫の小説『半落ち』の感想文が素材です。
英語の選択授業では、米国や英国など、英語を母国語とする講師が教えています。生徒の手元には電子辞書。17歳の女子生徒は、「先生は日本語がしゃべれないので、辞書で例文を調べて英語で会話しています。とっても楽しい」といいます。
同校には朝鮮籍と韓国籍がほぼ半数ずつ、わずかに日本国籍の生徒も在籍しています。日本の大学や専門学校に進学する生徒も多く、ここ数年は卒業生の4割以上を占めます。
教務部の鄭燦吉(チョン・チャンギル)副部長は「生徒は(在日)3世、4世の時代になりました。日本の社会で根をはり、生きていく生徒たちばかりです。教科書は独自に編纂(へんさん)したもので、日本の教科書を研究し、学習指導要領をみながら作っています」と話します。
自分の言葉・歴史
第2次世界大戦後、植民地支配から解放され、戦中に奪われた自国の言葉、歴史を取り戻そうとつくられたのが朝鮮学校です。現在、高校は全国に10校。約2000人が在籍しています。
生徒の普段の生活は日本語ですが、学内では朝鮮語で会話し、授業にも国語(朝鮮語)の時間があります。
子どもの権利条約では、出身国の言語や価値観を伝える教育を保障し、また自分の文明と異なる文明に対する尊重を育成することを規定しています。
1年生の男子生徒(16)は、「なぜ朝鮮語を学ぶのかと考えたとき、在日(朝鮮人)の歴史があって、受け継いでいくべきものがあると分かりました。この学校では朝鮮や民族の歴史を勉強できる」と語ります。
無償化法案からの除外という議論に、生徒たちは傷ついています。
投書でも「朝鮮学校も、日本学校と同じく自分の国の言葉を習い、数学や理科も習い、友達と話したり、掃除をしたり、部活をしたり。日本の子どもたちと変わらないのに何で?と何度も思いました」「これからずっと苦労してお金を払い続ける父母を見ることになると思うとすごく胸が痛いし、悲しいです」とつづっています。