2010年3月8日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
保険料下げ 運動で
各地の自治体で、高すぎる国民健康保険料(税)や、後期高齢者医療の保険料が住民の重い負担になっています。政府が負担軽減のための抜本的な手を打たなかったことに大きな原因がありますが、住民や日本共産党の活動で保険料を引き下げた自治体もあります。党福岡市議団の中条正実事務局長と埼玉県の加川義光さいたま市議のリポートです。
国民健康保険
25万署名集め 3年連続
福岡市
「がんばれば市を動かすことができる」―福岡市が2月、国民健康保険料を引き下げる方針を明らかにし市民は確信を深めています。
市当局によると、新年度の各世帯の保険料(医療分と後期高齢者支援分)は均等割(2万2735円/年額)と世帯割(3万3217円/年額)がいずれも据え置き、所得割の料率は前年度(11・25%)より引き下がります(6月に確定)。介護分は均等割で227円、世帯割で200円それぞれ引き下げです。介護分と所得割料率が3年連続引き下げです。
福岡市の国保加入者の8割は年所得200万円以下の低所得者です。3年連続引き下げたとしても、標準的世帯である年所得233万円の3人世帯で42万円もの保険料はあまりにも高く、川崎市の20万円、横浜市の22万円、広島市の24万円と他の政令市の2倍前後にのぼっています。
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日本共産党市議団(6人)は、2007年夏に市内の民商や新日本婦人の会などとともに「国保をよくする福岡市の会」を結成。地域の党支部も共同して署名を集めました。署名は1年目に14万6千人、これまでの累計で25万人に達しました。
議会では党市議が、高すぎて払えず保険証を取り上げられて病気になっても医者にかかれない事例や、子どものために積み立てた学資保険の満期金まで勝手に差し押さえた実態を示して、「カネの切れ目が命の切れ目」ともいうべき非情な福岡市の国保行政を追及してきました。
とくに重視したのが、なぜ福岡市の国保料がこんなに高いのかを解明し、その解決策の提案に挑むことでした。国保会計は複雑で謎に包まれていました。そこで市議団は、保険料がどのように決定されるのかがわかる資料の提出を当局に繰り返し要求し、国保会計の歳入歳出予算と保険料算定基礎に関する資料を出させました。そこで明らかになったのが前年度赤字分や保険料の減免分、滞納見込み分などを保険料に上乗せする仕組みでした。多くの市ではこうした費用が保険料に跳ね返らないよう一般会計から補てんしています。
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異常な「上乗せ方式」が明らかになると市民の怒りが広がりました。党市議団は、上乗せをやめて一般会計からの繰入金を増やせば国保料は引き下げられると提案。その財源は、年100億円を超す予算をあてている博多湾人工島事業を凍結すれば可能だと主張してきました。これには多くの市民から共感の声が寄せられ、署名運動をおおいに激励しました。
新年度予算案には一般会計繰入金を約6億円追加する「特例措置」が盛り込まれています。自民党市議が「繰入金は税金なので慎重に」などと発言するなか、党市議団は繰入金をさらに増やして国保料を大幅に引き下げるよう求めています。
「こういう活動をしてくれるのは共産党だけ」と党への信頼の声も寄せられます。党市議団は政治を前に進めつつ、大きな党づくりに力を尽くしています。(中条正実・党福岡市議団事務局長)
後期高齢者医療
請願と議会追及 続けて
埼玉県
埼玉県の後期高齢者医療の4月からの平均保険料は、2621円(3・53%)引き下げ、年7万1609円になります。2月18日の同広域連合議会で可決しました。
お年寄りからは「それはありがたい。助かります」の喜びの声が寄せられています。
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私と工藤薫議員(新座市議)は、昨年11月議会で2008年度医療事業特別会計決算審議で、実質収支が112億円の黒字、保険料剰余金が47億円もあることが明らかになり、「剰余金を使って保険料を引き下げよ」と迫ってきました。
2月定例会で県広域連合は、保険料剰余金が47億円(08年度決算)、09年度剰余金が42億円と見込み、引き下げに充てると答弁しました。
保険料引き下げにいたる、やりとりをまとめると、
――保険料の過大見積もりであったのではないかの問いに、当局は「保険料がちょっと高く、多めに取った」と答弁。
――「受診抑制があったのではないか」については否定しませんでした。
――何よりも、65〜74歳までの障害認定者が1万人以上後期高齢者医療制度に移行しなかった点では、当局は「後期高齢者の医療費が若干安くなったことの一因になる」と答弁しました。
これは「障害者(65〜74歳まで)が後期高齢者医療制度に入るかどうかは選択制である」と連合議会で取り上げ、障害者の生活と権利を守る埼玉県民連絡協議会(障埼連)などが運動してきました。
この保険料引き下げを勝ち取った背景には、埼玉県社会保障推進協議会(丸山信二事務局長)をはじめ、年金者組合、医療生協、保険医協会、埼労連、埼玉土建、埼商連、生活と健康を守る会、障埼連、自治労連、新日本婦人の会、各地域の社保協など567団体、2711筆の請願「保険料の引き下げと、もれなく保険証を渡すこと」の署名運動があり(昨年10月に県広域連合に提出)、大きな力となりました。
この請願は日本共産党(2人)議員以外の反対で不採択となりましたが、20人近くの県民が傍聴し見守りました。
不採択にされながらも、この3年間、議会ごとに県社保協などが請願署名を出し続けてきたことも力になっています。
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また、昨年10月、広域連合議会の議員補欠選挙(市議の部、欠員5)で日本共産党の工藤新座市議が党市議数の142人を上回る204票でトップ当選し、2人になったことも大きな力となりました。
さらに、工藤議員と私が主張してきた短期被保険者証交付を8件まで減らしたり、高齢者の病院などへの転院移送費用支給はゼロから4件(約10万円)の支給へと前進しました。
引き続き、私ども日本共産党は後期高齢者医療制度は4年先送りでなく直ちに廃止し、老人保健制度に戻すよう全国の皆さんとともに全力を尽くします。(埼玉県広域連合議員、加川義光さいたま市議)
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