2010年3月6日(土)「しんぶん赤旗」
国基準撤廃、自治体まかせ
「地域主権」法案を閣議決定
政府は5日、国が定める保育所や福祉施設などの最低基準の原則撤廃などを盛り込んだ「地域主権改革」一括法案と「国と地方の協議の場」を設置する法案を閣議決定しました。
一括法案は、保育や介護など福祉の質を確保するために国が定めている施設基準について、原則として自治体まかせにします。保育所の園庭の設置義務や避難経路の確保、防災カーテンの使用など建築基準法に上乗せされた耐火基準も撤廃されることになります。
人員配置や居室面積などは全国一律の基準とするものの、東京都など待機児童が多い都市部では居室面積基準も自治体に委ねることにしており、詰め込みをいっそうひどくしかねない内容です。
公営住宅の整備基準や道路構造の技術的基準も自治体条例に委ねるほか、中小企業支援など自治体が策定する計画に対する国との協議も廃止するなど、関係する41の法律を一括して改定します。
一方、協議の場は、地方自治に影響を及ぼす政策について、閣僚と全国知事会などの地方代表が議論します。
解説
公共サービス後退まねく
地域主権一括法案は、「地域主権」と称して地方自治と行政サービスを拡充するかのように見せながら、国の責任を投げ捨て、公共サービスを後退させかねないものです。
法案は国の基準を撤廃して地方に委ねるものですが、国が基準を定めているのは、憲法に基づいてナショナルミニマム(国民生活の最低限保障)をすべての国民に保障するためです。
保育所の面積基準を後退させれば、詰め込みをひどくするだけです。避難階段や耐火基準の撤廃は、火災で犠牲者を出した群馬県の高齢者入所施設「たまゆら」の事件のように命を危険にさらすものです。
しかも、国の基準をなくして地方まかせにすれば、国が財源保障の責任を果たすために地方に出している国庫負担金の削減にもつながり、公共サービスの向上どころか地域格差をさらに広げることになりかねません。
こうした指摘に対して原口一博総務相は「その通り。間違ったリーダーを選べばそのツケは選んだ人に来るのは当たり前」(地域戦略会議)と当然視していますが、国の責任を投げ捨てる無責任な姿勢です。
鳩山内閣が「一丁目一番地」と位置づける「地域主権改革」は、自公政権時代に「地方分権」の名で打ち出された「構造改革」路線による地方切り捨てを受け継いだものです。
鳩山内閣は昨年12月、自公政権時代の地方分権改革推進委員会の勧告をそのまま盛り込んだ「地方分権改革推進計画」を決定。さらに国の責任をいっそう投げ捨て、地方切り捨てをすすめる計画が「地域主権」です。
しかし、今でも遅れた福祉施設の水準や深刻な財源不足などの実態を見れば、基準の引き上げとそのために国が財源保障の責任を果たすことこそ求められます。国民がノーを突きつけた「構造改革」路線を突き進むなら住民・自治体との矛盾は広がらざるをえません。(深山直人)