2010年3月6日(土)「しんぶん赤旗」
中国全人代が始まる
格差是正 福祉・雇用を重視
8%の成長率掲げる
温首相が政府活動報告
【北京=山田俊英】中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第11期第3回会議が5日、北京の人民大会堂で開幕しました。温家宝首相が政府活動報告で、格差是正や福祉、雇用を重視した今年の施政方針を提案。国内総生産(GDP)成長率「8%程度」を目標に掲げました。
温首相は「中国が世界に先駆けて経済の回復・好転を実現させた」と成果を誇り、その要因の第一に「住民の消費拡大に力を入れた」ことを挙げました。
今年、都市部で新規雇用を900万人増やして失業率を4・6%に抑え、消費者物価上昇率を3%程度にする目標を示しました。
昨年実績の8・7%増を下回る成長目標を示すことについて、温首相は「良好な発展を最優先させる」ためと説明。内需不足や農村の貧困、雇用難、科学技術の立ち遅れなど積年の矛盾を克服する「発展方式の転換」を優先課題に位置づけました。
農村対策では「都市との統一的発展」を強調し、中央財政から今年8183億元(約10兆6380億円)を支出してインフラを整備します。農産物の政府買い付け価格を引き上げて農民の増収を図るほか、戸籍制度の改革を進めて、中小都市の発展をめざします。
雇用対策では433億元(約5600億円)の予算を計上し、大卒者、出稼ぎ農民らの就業を支援します。
都市部で不満が高まっている住宅価格高騰に対しては、公共住宅の建設やマイホーム購入の支援、投機抑制などの政策を示しました。
温首相は新疆ウイグル自治区やチベット自治区など経済発展の遅れた中西部へのてこ入れに何度も言及し、老朽校舎の改築など義務教育条件の整備にも目配りを指示しました。
「発展方式の転換」のもう一つの柱である経済構造改革では、遅れた生産能力の整理や省エネ・温室効果ガス排出削減の必要性を指摘。「気候変動対策の国際協力に前向きな姿勢で臨む」と述べました。
外交分野では、この間のG20(20カ国・地域)首脳会議に触れて「重要な多国間の取り組みを主たる土台とする」と述べ、国際システムの変革に積極的に関与し、途上国の利益を擁護するとの方針を示しました。
汚職・官僚主義に警告
【北京=山田俊英】中国の温家宝首相は5日行った全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告で公務員の汚職、官僚主義に警告し、「権力は太陽のもとで行使されなければならない」と綱紀粛正や大衆による批判・監督を呼びかけました。
温首相は「政府の活動は人民の期待に十分応えているといえない。一部の公務員は法律に基づいて行政を行う意識が希薄であり、一部の分野では腐敗現象が多発する傾向がある」と指摘。「人民が満足できるサービス型政府」の建設を強調しました。
土地収用や家屋の立ち退きの際、公務員は住民の利益を守らなければならないと述べ、投書、陳情の処理を改善するよう指示。「政策決定の科学化、民主化」も求めました。
幹部の責任を問う行政問責制や政務の公開を進め、「世論による監督の役割を十分活用する」考えを示しました。
このほか行政機関によるビル、公会堂、ホテルの建設抑制、派手な事務所の禁止、接待・公用車利用の改革、海外出張の厳格な規制など例年になく細かい綱紀粛正を命じました。