2010年3月5日(金)「しんぶん赤旗」
普天間基地問題
鳩山政権 迷走から逆走へ
県内「移設」強まる
米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「移設」問題をめぐる鳩山民主党政権の状況は、もはや“迷走”ではありません。昨年8月の総選挙で「政治を前に」と自公政権に審判を下した国民の願いに背く“逆走”ぶりを展開しています。
怒りが高まる
平野博文官房長官は4日の記者会見で、2日のルース駐日米大使との会談では、「ゼロベース」で「移設先」を検討していることを伝えたと強調しました。しかし与党の国民新党は3日、(1)沖縄県名護市の米海兵隊キャンプ・シュワブ陸上部に1500メートルの滑走路を建設(2)米空軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)への統合―の2案を正式決定。民主、国民新はシュワブ陸上案を軸に、県内「移設」への動きを強めています。
これについては、2004〜05年の在日米軍再編協議で、米側にシュワブ陸上案を提案した防衛省の内部にも「我が意を得たり」の雰囲気が漂っています。
しかし、シュワブ陸上案に、名護市辺野古区、豊原区、久志区の3区長が「断固反対」と表明。これまで現行案(シュワブ沿岸への新基地建設)を容認してきた仲井真弘多沖縄県知事も、県内「移設」は容認できないとの考えを示唆する発言をしました。県議会では県内「移設」反対の意見書を全会一致で可決するなど、県民の怒りは高まっています。
普天間居座りも
一方、鳩山政権は依然として、自公政権時代に日米間で合意した現行案の余地を残しています。日本共産党の笠井亮議員は、2月26日の衆院予算委員会で辺野古の新基地建設関連工事を継続していることを追及。北沢俊美防衛相は「(普天間基地が)どこに移っても支障がないようにという判断だ」と答えました。
さらに米側は普天間基地の滑走路を全面的に改修しています。普天間「移設」問題での日米協議がどうなろうとも、沖縄での海兵隊の運用を可能にするものです。
連立与党の社民党は、北海道の苫小牧東部、静岡県の東富士演習場など、過去の日米交渉で立ち消えになった日本各地も「移設」候補とする案を提案する意向です。「移設」論に固執してたどり着いた先は、自公政権時代に消えていった諸案への回帰です。
辺野古で座り込みを続けるヘリ基地反対協議会の大西照雄代表委員は力を込めます。「名護市への『移設』を推し進めるならば沖縄の怒りは爆発するでしょう。『移設』論では結局、現行案に戻ってくる。沖縄と本土の運動をもっと盛り上げなければ」―。
民主党の長島昭久防衛政務官は1日、都内での講演で「沖縄の人たちが本当に反対だと、日本政府も(米海兵隊に)出て行ってほしいということになると、簡単に出て行く可能性がある」と述べています。
「そもそも普天間問題の源流は、街中の大石ならぬ危険な“爆弾”の『移設』ではなく『撤去』という全面返還だった。原点に戻ろう」(沖縄の地元紙・琉球新報2月19日付)―。まさにこの立場の運動が求められています。(洞口昇幸)