2010年3月2日(火)「しんぶん赤旗」

チリ大地震

迫られる観測体制の強化


 北海道・奥尻島の津波以来、17年ぶりの大津波警報。東北3県の太平洋沿岸の高いところで3メートル以上の津波を予測したチリ地震津波について、気象庁は1日の会見で「結果的に予測が少し過大だった」と説明しました。しかし、津波の専門家は、気象庁の予想は「適切」と指摘。今回の津波の予報の教訓として、津波の観測体制の強化がクローズアップされています。

 気象庁が今回の津波で発表した最大観測記録は、岩手県久慈市の1・2メートル(久慈港)でした。

 気象庁が予報で発表する「津波の高さ」は、防災上問題となる「津波の高さ」と一致しないので注意が必要です。気象庁が予報や観測で発表する「津波の高さ」は、潮位を測る検潮所の潮位計の観測記録に表れる波形の谷から山までの高さを、2で割ったいわゆる「波の高さ」です。

 しかし、防災上問題となる「津波の高さ」は、平均海水面から比べた浸水場所の高さで表すのが一般的で、津波の高さを正確に把握する新しい津波観測体制の強化が、これまでの津波災害の教訓として指摘されてきました。

 「潮位計がある場所が1・5メートルでも、湾内で3メートルになるということもあるので、予報が外れたとはいえない」「局所的には3メートルに達する恐れはあった」「警報を出すべき津波だ」と指摘する津波専門家もいます。

 気象庁によると、津波監視に使っている津波観測施設(検潮所など)は全国171カ所。このうち気象庁の施設は71カ所だけで、沖合で津波を観測する施設を気象庁は設置していません。

 国土交通省は沖合GPS(全地球測位システム)波浪計(8カ所)を設置し、津波監視にも利用されていますが、設置されているのは太平洋側だけで日本海側にはありません。

 国土交通省は津波・高潮危機管理対策緊急事業を始めているものの、実施中の津波・高潮観測施設は静岡県の1カ所だけです。

 気象庁地震津波監視課は1日の会見で「警報は津波から人の命を守るのが最大の目的」として、津波予報について「いろいろな角度から分析し、精度を高めたい」としています。そのためにも、国には千島列島や小笠原諸島などを含む多数の日本沿岸での津波計設置が迫られています。(宇野龍彦)

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