2010年3月2日(火)「しんぶん赤旗」
チリ大地震
震源地付近「食料ない」
道路網寸断、救援待つ人々
【メキシコ市=菅原啓】チリを襲った巨大地震は、各地で停電や断水、道路網の寸断を引き起こし、被災地への救援物資の輸送を阻む事態につながっています。ペレス・ジョマ内相は2月28日、「主要な問題は人や物資の流れを正常化させるための幹線道路の修復だ」と語りました。
現地からの報道によると、大規模な被害を受けたコンセプシオンでは地震発生直後から停電と断水が続き、特に飲み水の不足が深刻化しています。
国営テレビは、スーパーから商品を持ち出し、警官隊の放水で逃げ惑う群衆を映し出しました。ある男性は「これは子どもたちのためだ。食べさせるためには、これしかないんだ」とテレビカメラに向かって涙ながらに語っていました。
地元チリのメディアは「家には食べ物がない。(金をもっていても)買うところがない」と語りながら、商品を持ち出す市民の声を伝えています。
スーパー襲撃、略奪事件は、チリ国営テレビなどで全国に衝撃を与えるとともに、救援物資が届かない被災者の窮状を告発するものとなりました。
こうした事態を受け政府は、治安の確保のためビオビオ、マウレ両州に30日間の非常事態令を発令しました。
バチェレ大統領は、政府がスーパーマーケットのチェーン店を経営する会社と交渉し、最も必要とされている一部食料品を被災者に無料で提供する合意を結んだと発表。被災者に冷静な行動を呼び掛けました。
しかし、停電が続き、携帯電話も多くが電池切れとなっているもとで、この措置を徹底するにも大きな困難が予想されます。
地震が頻繁に発生する国として対策には力を入れてきたはずのチリですが、今回の地震の規模は想定を上回る「史上無類の非常事態」(バチェレ大統領)となっています。
ビダル国防相は28日の会見で、地震発生直後、海軍が津波警報を発表せず被害を拡大させた問題で、「海軍は過ちを犯した」と認めました。
被災者の不安をやわらげ、救援物資を早急に届けるチリ当局の「巨大な努力」(バチェレ大統領)が必要となっています。