2010年3月1日(月)「しんぶん赤旗」

イラク総選挙まで1週間

旧政権党排除 混迷の兆し

米・イランの「干渉」懸念も


 【カイロ=松本眞志】3月7日のイラク連邦議会(定数325議席)総選挙の投票日まで1週間となりました。選挙ではイラク復興事業の成否や民主主義の定着が問われますが、旧政権党・バース党関係者の立候補が禁止されるなど、混迷のきざしも見えます。

 今回の選挙ではイスラム教スンニ派とシーア派の対立構図が一変。マリキ首相は新会派「法治国家連合」を結成し、宗派間対立の克服を訴えてスンニ派にも支持を広げ、現在支持率29・9%でトップに立っています。

 アラウィ元首相が率いるスンニ・シーア両派と世俗派を含む「イラキーヤ(イラク国民運動)」が同21・8%で続き、シーア派のイスラム最高評議会やサドル師派から成る「イラク国民同盟」が17・2%、クルド二大政党の統一会派「クルド同盟」が10%となっています。

投票棄権の動き

 スンニ派は、最大会派「イラク合意戦線」が選挙に参加するものの、今年に入って政権内や連邦議会内でスンニ派の旧バース党員の選挙参加への規制が表面化。スンニ派住民の政府に対する不信が強まり、投票を棄権する動きが生まれています。

 マリキ政権はこれまで、旧バース党員を含む国民和解事業を推進。2007年には旧フセイン政権の政治囚の恩赦と指名手配リストを撤廃、08年には旧バース党員の公職復帰を一部認める「説明責任・正義法」を公布しました。

 しかし、今年1月にイラク選管が突然、憲法違反を理由に旧バース党に関係する政治家500人以上の排除を決定。それは撤回されたものの、同党関係者の処遇を検討する独立機関「説明責任・正義委員会」は、「イラク国民対話」党首のサレハ・ムトラク氏ら145人の候補者を不適格としました。

 「イラク国民対話」が所属する会派「イラキーヤ」は2月13日、抗議の意思表示として選挙運動の一時中断を表明。いったんは選挙不参加を決めましたが、25日に撤回しています。

“イランの影響”

 政府が旧バース党員に対する態度を急変させた背景に、イランの影響を指摘する声もあります。オディアーノ駐イラク米軍司令官は16日、内部情報から複数のイラクの有力政治家がイランの革命防衛隊と提携して旧バース党員排除をすすめていると発言しました。

 一方、イラク政局の混迷にオバマ米政権は不安を募らせています。

 オバマ大統領は2011年末を期限とするイラク米軍の撤退が遅れれば、アフガニスタン戦争にも影響するとの懸念から、今後の政権の枠組みを決める総選挙を重視しています。今年1月にはバイデン副大統領をイラクに派遣し、「旧バース党員排除」を選挙後にするよう要請。ただマリキ政権は「干渉行為」と退けました。


イラク政党・会派の構図

●イスラム教スンニ派

 ▽イラク合意戦線=イラク・イスラム党、イラク人民連合、トルクメニスタン正義党が参加

●同シーア派

 ▽法治国家連合=マリキ首相が率いるダアワ党を中心にスンニ派や世俗派が参加

 ▽イラク国民同盟=イラク・イスラム最高評議会、サドル師派、ファディラ党が参加

●クルド勢力

 ▽クルド同盟=クルド民主党、クルド愛国同盟が参加

●世俗派

 ▽イラキーヤ(イラク国民運動)=イラク合意戦線から離れたタレク・ハシミ副大統領が元首相のシーア派でイラク国民名簿のアラウィ代表と結成。イラク国民対話、イラク・トルクメン戦線などが参加


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