2010年3月1日(月)「しんぶん赤旗」
国防費削減敵視の米長官発言
欧米関係に「すきま風」
脱軍事化にいらだち
北大西洋条約機構(NATO)内がアフガニスタン増派をめぐって足並みがそろわないもと、ゲーツ米国防長官が欧州諸国の国防費削減の傾向を敵視する発言を行いました。欧米関係に「すきま風」が吹いています。(ワシントン=小林俊哉、ロンドン=小玉純一)
2月22、23日にワシントンで行われたNATOの「新戦略概念セミナー」での講演。ゲーツ氏は「欧州の脱軍事化で、一般国民や政治家の広範な部分は、軍事力とそれに伴う危険を回避している。20世紀には祝福されたが、21世紀には真の安全保障と永続的平和の樹立の障害となっている」と述べました。
同セミナーは、NATOが11年ぶりに進めている「新戦略概念」策定作業の一環。1999年に採択された「新戦略概念」は、共同防衛機構というNATOの建前から進んで、「周辺地域」への軍事介入を掲げました。
今回の改定で米側は、NATOが作戦・機構両面でアフガン型の戦争により適応できるような「根本的改革」を求めています。
ゲーツ氏は講演で「非常に深刻で長期的な組織的問題」として「NATOの予算危機」を強調。「今年に入ってまだ2カ月もたたないのに、NATOは数億ユーロの不足に直面している」、「加盟28カ国のうち、国内総生産(GDP)の2%という国防支出目標を満たしているのは5カ国にすぎない」などと述べました。
その理由に「文化的、政治的潮流」として欧州の“平和主義”を指摘。「弱さ、あるいは弱さと受け取られることが、敵に誤解を与え、攻撃を呼び込むことになりかねない」と、欧州で高まるアフガン戦争への反対世論や政治状況をやり玉に挙げ、同盟国を“叱責(しっせき)”しました。
ゲーツ氏の講演について、英紙ガーディアンは「米政府が欧州の自己満足とみなすものへの容赦のない攻撃」、「NATO官僚への激怒」と論評。スペイン紙バンガルディアは「ゲーツ氏は欧州の『脱軍事化』にいらだちを表明した」と報じました。
英国際戦略研究所のダナ・アリン研究員は米紙ニューヨーク・タイムズで「本物の厳しい警告を発した意識的発言であろうとなかろうと、アフガンでの連合作戦に関して米軍高官に欲求不満があることは疑いようがない」と語っています。