2010年3月1日(月)「しんぶん赤旗」

主張

新「安保防衛懇」

「タブーなき議論」の危険性


 政府の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=佐藤茂雄・京阪電鉄最高経営責任者)が、年内に予定する新「防衛計画の大綱」と次期「中期防衛力整備計画」の策定に向けた議論を開始しました。今夏をめどに報告書をまとめる方針です。

 一方で日米両政府は、日米安保条約改定50周年を機に日米の軍事同盟を強化する方向で協議を始めています。懇談会の議論はこの日米協議と深くからみあいながら進むのは必至です。それだけに懇談会の動向に注意を払うことが重要です。

米国や財界のいいなり

 「大綱」は今後の軍事政策の基本で、「中期防」はそのための装備などを定めます。鳩山由紀夫首相は18日の懇談会の初会合で、日米同盟の深化、国際社会の平和のためのとりくみ、周辺諸国の軍事力の近代化への対応―などの検討を指示しました。

 とくに重大なのは鳩山首相が、「タブーのない議論を行ってほしい」とのべたことです。「タブーのない議論」が、戦争を禁止した憲法9条と、それにもとづく平和原則にとらわれず議論することを意味するとすれば問題です。歯止めのない危険な議論になるのは避けられません。

 鳩山首相は、日米軍事同盟を「重層的な同盟関係へと深化・発展」させると強調しています。米国の戦争をささえてきた日米軍事協力態勢を強めることがその柱のひとつであるのは明らかです。

 自衛隊が、14機ものヘリを載せた大型ヘリ空母を建造し海外派兵能力を強めているのはそのためです。1181億円を投じてつくる2万トンものヘリ空母は、日本が米軍とともに海外で戦争する能力を飛躍的に強めることになります。

 こうした海外派兵能力の強化は、政府が建前にしてきた「専守防衛」の方針にも反します。「専守防衛」は政府が憲法の制約を無視できず、自衛隊の存続・強化を正当化するためにもちだした方針です。「タブーのない議論」が「専守防衛」の撤廃になるとすれば重大です。

 予想される議論のなかでも、武器輸出を禁止した政府の「武器輸出三原則」の見直しの動きは見過ごせません。北沢俊美防衛相は1月に日本防衛装備工業会で、「そろそろ基本的な考え方を見直していくべきだ」とのべました。国会で発言が追及されても防衛相は、特例で日米共同開発・生産を認めるやり方ではなく、「根本から議論」すべきだと開き直っています。

 「武器輸出三原則」は憲法の平和原則のひとつです。ゲーツ米国防長官は昨年10月、日米共同開発の迎撃ミサイルを欧州などに輸出できるよう日本側に対応を求めました。財界も武器輸出を緩和するよう求めています。米国や財界のいいなりの「三原則」見直しは、日本を国際紛争に加担する国に変えることになります。

憲法9条守ってこそ

 鳩山首相は日米軍事同盟を「深化・発展させる」といいますが、アジアも世界も紛争を戦争ではなく、政治的・外交的に解決する流れになっています。この平和の流れを見ずに、日本の安全保障を論ずるべきではありません。

 憲法の平和原則を見直す企てをやめ、「日米軍事同盟絶対」の政治を根本から転換すべきです。



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