2010年2月28日(日)「しんぶん赤旗」

主張

もんじゅ運転再開

安全が確保されたといえぬ


 高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開を政府が了承しました。1995年のナトリウムもれ火災事故によって、運転を中止していたものです。

運転再開をやめよ

 日本原子力研究開発機構は、地元の福井県と敦賀市の了解が得られれば3月にも運転を再開したいとしていますが、住民からは大きな不安の声があがっています。運転再開をとりやめ、「もんじゅ」の安全性について根本的に再検討すべきです。

 「もんじゅ」は、ウランの数万倍の放射能をもつプルトニウムを燃料とする点でも、冷却材に用いる液体ナトリウムの扱いが困難だという点でも、既存の原発(軽水炉)以上に危険な原子炉です。原子炉内の放射性物質が外部に大量に放出されるような深刻な事故が起きれば、取り返しのつかない事態となります。

 95年の事故は、冷却系配管からナトリウムがもれて火災にいたるという重大なもので、安全性に重大な欠陥があることを露呈しました。

 原子力安全・保安院は、事故を起こした設備の改造とナトリウムもれ対策が行われたとして、「安全確保を十分行いうる体制となっている」といいます。しかし、改造工事後も、ナトリウムもれ検知器の取り付けミスや排気ダクト(配管)の腐食が発見されるなど、トラブルが相次ぎました。その教訓も掘り下げられないままでは、今後もトラブルや事故を起こさない保証はありません。

 さらに、「もんじゅ」の直近には長さ15キロメートルの活断層があることも明らかになっています。中越沖地震後に原子力機構が実施した耐震性再評価では、許容値ぎりぎりの配管もあります。とても、安全が確保されたといえる状態ではありません。

 今回の運転再開をめぐって、日本の原子力安全規制のあり方も、あらためて問われています。原子力安全規制を担うはずの原子力安全・保安院は、経済産業省という推進機関の内部組織でしかありません。ここに、日本の原子力安全規制の根本的問題があります。

 原子力推進機関から独立して安全規制に責任をもつ規制機関を確立することは、国際的常識であり、チェルノブイリ原発事故(1986年)の教訓です。日本でも、独立した規制機関を確立しなければなりません。

高速増殖炉見直しを

 同時に、高速増殖炉によるプルトニウム利用を柱とする原子力開発も根本的に見直すべきです。

 高速増殖炉は、消費した量以上のプルトニウムをつくり出す「夢の原子炉」といわれ、早くから開発がすすめられてきました。しかし、ナトリウムもれなどの技術的困難や経済性の見通しがたたないことから、欧米各国は開発を中止しました。核兵器の原料でもあるプルトニウムの利用が広がることで核拡散リスクが高まることへの懸念もあります。

 日本の高速増殖炉開発には、すでに2兆円近くの資金が投入されています。「もんじゅ」だけでも約9000億円です。これ以上の巨額の無駄遣いを続けることは許されません。

 鳩山政権は、プルトニウム利用という従来路線に固執せず、高速増殖炉開発を見直すべきです。


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