2010年2月27日(土)「しんぶん赤旗」

主張

「1票の格差」

手直しでなく小選挙区廃止を


 昨年8月の総選挙で、小選挙区選挙の「1票の格差」が最大2・30倍だったのは、法の下での平等を保障した憲法に違反するとの判決が、各地の裁判所で相次いでいます。今後も定数訴訟が続き、違憲判決が予想される事態です。

 いまのところ選挙そのものは無効とされていませんが、相次ぐ違憲判決は、小選挙区で国会議員を選ぶ選挙制度そのものが限界に来ていることを示すものです。無理な定数「是正」を繰り返すのではなく、小選挙区制そのものの廃止に取り組むべきです。

1人2票もたないは当然

 昨年の総選挙での小選挙区選挙を違憲とする判決は、昨年末の大阪高裁に続き、ことし1月には広島高裁で、さらに去る24日には東京高裁でもだされました。同選挙をめぐっては全国8高裁・支部で定数訴訟が起こされており、最高裁で違憲の判断が争われることも予想されます。

 昨年の総選挙の小選挙区での「1票の格差」は、最小の高知3区にたいし、千葉4区が最大で2・30倍、格差2倍以上が45選挙区に上ります。投票は1人1票が原則で、1人の有権者が事実上2票以上の投票権を行使することになる2倍以上の格差が、法の下での平等の原則に照らして許されないのは当然のことです。

 問題は一つの選挙区で1人の国会議員を選ぶ小選挙区の場合、格差を2倍以上としないように区割りや定数を定めると法律で決めているのに、全体の6分の1近い選挙区で格差が2倍を超え、違憲判決が相次ぐ事態となっていることです。文字通り、小選挙区制そのものの限界を示しています。

 国勢調査の結果を受けて変更されることになっている全国300の小選挙区の区割りは、現在でも一つの行政区が複数の選挙区に分割される事態となっており、議員と有権者との結びつきを考えれば、たびたび大幅に変更するのは困難です。各裁判所の判決が「格差拡大の原因」と指摘する、まず各都道府県に1ずつ配分し残りを人口比で再配分するという定数配分の仕組みも、人口の少ない県も多い県もあることを考えれば、変更は簡単ではありません。

 「1票の格差」を解消することは、民主主義をつらぬくうえで、一刻の猶予も許されない問題です。しかし、その問題の解決は現在の小選挙区制を前提に、区割りの変更や定数の配分で「手直し」するというだけではもはや限界にきています。相次ぐ裁判所の違憲判決を尊重するなら、小選挙区制そのものの見直しが不可欠となっていることは明らかです。

比例定数削減策動は論外

 総選挙は小選挙区選挙と比例代表選挙の組み合わせ(並立制)で行われます。もともと、1選挙区に一つしかない議席を1票でも得票が多い候補が獲得する小選挙区制は、残りの投票が議席に結びつかない「死に票」となり、全体としても議会の構成に得票が正しく反映しない不公正な制度です。

 非民主的な小選挙区制から、議席に得票が反映する比例代表制に移るのが、世界の流れです。

 相次ぐ違憲判決を契機にいまこそ小選挙区制を廃止し、民意を反映する比例代表中心の制度にする議論を本格化すべきです。比例代表の定数を削減する民主党などの策動は、まったくの論外です。



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