2010年2月26日(金)「しんぶん赤旗」

米公聴会

トヨタの体質に批判

「もうけ優先」「欠陥隠し」


 【ワシントン=西村央】米国で死亡事故も発生しているトヨタ自動車の急加速、大量リコール(回収・無償修理)問題。米連邦議会で23、24の両日開かれた公聴会では、「トヨタは最初はドライバーを責め、次はフロアマットの不備にし、3番目にはアクセルペダルにした」と、議員からは「もうけ優先」「欠陥隠し」の体質への批判が相次ぎました。


リコール節約内部文書

 「トヨタには、消費者の安全より、もうけに関心を払っている明白な証拠がある」

 24日に開かれた監視・政府改革委員会の公聴会の冒頭、タウンズ委員長はこう指摘しました。

 明示したのは、米道路交通安全局(NHTSA)の調査を遅らせることにより、リコールを回避。1億ドル(約92億円)の節約につながったというトヨタの内部文書です。

 同委員長は続けます。

 「トヨタ自身の内部文書は、NHTSAの調査の遅れや打ち切り、新安全規定の遅れ、安全性の欠陥を発見することの阻止が推奨されたことを示している。実際、トヨタの幹部は、NHTSAが急加速に関する欠陥を見つけるのを防いだことによる1億ドルの節約を自慢した」

 この文書について、トヨタ自動車の豊田章男社長は、「新任の北米トヨタ社長への説明資料の一部と理解しているが、書かれた背景が分からないので答えられない」と述べ、無責任ぶりを示しました。

 「NHTSAは、納税者を見捨て、トヨタは顧客を見捨てた」。タウンズ委員長の指摘は、NHTSAとトヨタ自動車の双方に厳しい目を向けていました。

 23日に開かれたエネルギー・商業委員会の公聴会でも、グリーン議員(民主党)は、「NHTSAは機械的なものであれ、電子制御システムであれ、すべての問題を調査するスタッフをそろえなければならない」と主張。トヨタ車でアクセルペダルの不具合や、突然の暴走という命に直結する問題が出ているなか、これを見逃さない態勢強化を訴えたものでした。

 サットン議員(民主党)は、トヨタが当初フロアマットの置き方が悪いからだといって、アクセルペダルの不具合を認めなかったことをあげ、こうした欠陥を隠すやり方は「アメリカ人にさらに問題個所があるのではないかという疑念を持たせることになる」と指摘しました。

急加速160キロの恐怖証言

 公聴会で焦点となったのは、電子制御の安全性にかかわる問題です。

 23日の公聴会で、テネシー州に住むスミス夫妻が、トヨタの高級車レクサス運転中に、突然急加速を始め、時速160キロでの走行という恐怖を味わったことを証言。翌24日の公聴会に出席した豊田社長は、この事例についてのコメントを求められ、「運転中にご心配をかけたことを申し訳なく思っている」と謝罪しました。

 電子制御にかかわる豊田社長の表明は、「異常があればエンジンがストップする設計であり、現段階での社内テストでは問題は出ていない」と、暴走との因果関係は認めませんでした。

 その一方、カリフォルニア州サンディエゴで起きたレクサス暴走での4人の死亡事故について、遺族に哀悼の意を示しました。「安全第一で設計しているが、現実には事故が起きている」として、豊田社長が示したのは、「業界全体としての解決を。オープンな方法でトヨタも協力する」という方向のみでした。

生命の危険に遅い対応

 今回の公聴会は、トヨタ車の安全性への懸念が広がるなか、注目度が高く、両日とも開始時刻の2時間前には委員会室前の通路は、マスコミ関係者でごった返し、傍聴希望者の長い列ができました。

 24日、カメラの放列の前で、豊田社長が何度も述べたのは、「人材育成が、生産拡大のスピードに追いついていかなかった」という反省の言葉でした。

 これにたいして、クシニチ議員(民主党)は次のように指摘しました。

 「生産拡大が急速というが、さまざまな対応が遅すぎたのが問題ではないか。人々の生命を危険にさらす部品の欠陥の認識があまりに遅く、開発計画についての問題点の把握が遅れている。そのなかで、製造コスト削減で利益をあげているのではないか」

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