2010年2月20日(土)「しんぶん赤旗」
普天間「移設」シュワブ陸上案
鳩山政権 民意に背
「即時撤去」で対米交渉を
米海兵隊普天間基地の「移設」問題で、政府が水面下でキャンプ・シュワブ陸上部への「移設」案を検討し、米政府に打診していたことは、1月24日の名護市長選挙で示された民意を踏みにじる行為です。
「名護市民はこれ以上の負担は受け入れることはできない。市民をがっかりさせるような答えは出していただきたくない」―。普天間基地「移設」に伴う新基地建設反対の公約を掲げて名護市長選に当選した稲嶺進市長は17、18日の両日、都内で政府や各党党首に13年前の市民投票と同じく、市長選で示された民意を伝えました。
これに対し、鳩山由紀夫首相は「重く受け止めている」と応じましたが、並行して民意に真っ向から反するシュワブ陸上案を検討していたことになります。
米軍基地強化を推進した自公政権を退場に追い込んだ昨年8月の総選挙で鳩山氏が掲げた普天間基地の「県外・国外移設」の公約にも反します。安全保障に詳しい元政府高官も「『県外・国外移設』を公約したときと、現在の日本の安全保障環境は変わっていないのに、公約をくつがえすことは国民に通用しない」と述べます。
民家上空飛行
シュワブ陸上案は自公政権のもとで、たびたび浮上してきたものです。しかし、米側が演習場施設の移転や山間地の大規模な整地が必要などという理由から拒否し、頓挫しました。「(米軍の)射撃訓練の移転や、(ヘリコプターが)民家上空を飛ぶことをどうクリアしながら考えるか」(19日、前原誠司沖縄・北方担当相)と、すでに政府内からも疑問の声が出ています。
もともと、現行案がシュワブ沿岸部のV字形滑走路となったのは、民家の上空を避けるためという口実でした。陸上案では、いかなる飛行ルートであっても民家上空を避けて通ることはできません。しかも、米軍はこれから事故の危険が高い垂直離着陸機MV22オスプレイを配備しようとしています。
オスプレイ配備を前提にすれば、1600メートル級の滑走路が必要となります。基地内の山を大規模に削らなければならず、土砂の流出などで辺野古大浦湾の海にも影響を与える危険性が大いにあります。
シュワブ陸上案は沖縄だけの基地負担にとどまりません。鹿児島県の徳之島や馬毛島など鳩山政権の下での「移設先」候補とされたところへの普天間基地所属ヘリ部隊の訓練移転も合わせて提示するとされています。
国際法を無視
そもそも、普天間基地は戦後、国際法を無視して米軍が住民の土地を無理やり奪ってつくられたものです。アメリカも「世界一危険」と認める普天間基地の「移設先」探しに政府が必死になることは、無法の下でつくられた危険な普天間基地の存在を肯定することです。
鳩山首相をはじめ、「民主主義国家だから、選挙の結果は尊重する」(17日、北沢俊美防衛相)「名護市長の気持ち、県民の気持ちも生かした案を決める」(同、亀井静香国民新党代表)というならば、「危険な基地は即時撤去しろ」との立場で、対米交渉に乗り出すべきです。(洞口昇幸)