2010年2月18日(木)「しんぶん赤旗」
主張
米軍基地検討委
「移設」でなく「撤去」に力注げ
政府・与党の沖縄基地問題検討委員会(委員長・平野博文官房長官)は、米海兵隊普天間基地の具体的な「移設」先の提示を、またも見送りました。沖縄県内にせよ、県外・国内にせよ、「移設」先の検討が浮上するたびに、受け入れ反対の声が広がるためです。
「移設」先探しでは、普天間基地問題が解決できないことはいよいよ明らかです。沖縄県民と国民は普天間基地の即時閉鎖・無条件撤去を望んでいます。政府・与党に「移設」先探しのエネルギーがあるなら、無条件撤去のための米政府との本腰を入れた交渉に、一刻も早くふみだすべきです。
「移設」先探しは筋違い
もともと米政府当局者でさえ「世界一危険」と認める普天間基地は、つくられた経緯からも、沖縄県民を苦しめている実態からも、無条件撤去が当然の基地です。「移設」先探しに走り回ること自体、不当で不合理です。
普天間基地をはじめ沖縄の多くの米軍基地は、太平洋戦争末期に米軍が沖縄を占領したさい住民を収容所に囲い込み、土地を奪って建設したものです。その後米軍は使い勝手のいい広大な基地にするために、返還を求めた住民をさらに「銃剣とブルドーザー」でおしのけ、拡張してきました。
米軍の土地強奪は戦時国際法にも違反した暴挙です。戦争が終わればただちに県民に返すのが当然でした。土地を不当に奪われた沖縄県民が、「返せ」というのは当然の権利であり要求です。
米軍基地の無条件撤去を要求するのが政府の仕事であるはずなのに、政府が「移設」先探しに血道を上げるのは、「移設」先が決まらなければ返還を求めないというのと同じです。住宅密集地のど真ん中にあり、爆音被害と墜落の危険がいっぱいの普天間基地は、即時閉鎖するしかありません。政府の方針では、住民に危険を我慢しろということにしかなりません。
「移設」を口実に名護市辺野古崎に最新鋭の基地を建設しようという計画は、住民に「ノー」を突きつけられました。嘉手納基地への移駐や辺野古の陸上部に新基地を建設しようという案も県民に支持されていません。沖縄県外へ持っていこうという計画も住民に支持されません。政府は「移設」先探しでは問題が解決しないことを認め、住民にこれ以上痛みを押し付けるのではなく、即時・無条件撤去を求め、直ちに本腰を入れた対米交渉を開始すべきです。
米軍の日本駐留を認めた安保条約も、住民が望まない基地まで押し付ける権利は認めていません。世界に「殴りこむ」米海兵隊が日本を守る「抑止力」だなどというのは、使い古されたごまかしです。政府は国民をだましてきた旧来の呪縛(じゅばく)をこそ、断ち切るべきです。
民意をぶつける好機だ
先日の名護市長選では新基地に反対する市長が誕生しました。沖縄県民は「基地のない沖縄」を切望し、基地に依存しなくても経済や暮らしが発展していけることを求めています。「安保があるから」というなら、その安保条約そのものを見直すべきだという声も高まっています。
沖縄の地元紙は「民意をぶつける時機だ」といいます。政府が普天間基地の無条件返還に向け交渉することこそ、県民の願いに応えることになります。