2010年2月16日(火)「しんぶん赤旗」

主張

GDP

古い成長戦略の根本転換で


 内閣府が発表した昨年10〜12月期の国内総生産(GDP)の速報によると、物価の影響を除いた実質GDPは前期比で4・6%増(年率換算)となりました。

 より国民の実感に近い名目GDPは、0・9%増にとどまりました。内需が7期連続のマイナスとなる一方で、輸出は3期連続のプラスです。

大もとに異常なゆがみ

 内需も輸出も日本と輸出先の景気対策に依存し、将来の需要を「先食い」して維持しています。家計部門に企業部門の利益が波及して需要が拡大し、さらに企業部門が活性化される経済の正常な循環からは程遠い姿です。

 同時に発表された2009年の経済成長率は、前年と比べて実質5%のマイナス、名目で6%減と戦後最悪の下落を記録しました。経済協力開発機構(OECD)の見通しでは、主要7カ国(G7)で最も厳しい落ち込みです。

 これほど日本経済の落ち込みが激しくなり、なおかつ経済の正常な循環が取り戻せないでいる大もとには、日本経済の異常なゆがみがあります。国民が汗水たらして生み出した富を、大企業が「独り占め」にするシステムです。

 リーマン・ショック前の10年(1997〜2007年)で、日本以外のG7諸国は雇用者報酬を2割から7割伸ばしているのに日本だけが減らしています。今回発表された09年の数字では、日本の雇用者報酬はさらに10兆円も減り、97年水準からは26兆円ものマイナスとなっています。

 その一方で、資本金10億円以上の大企業の経常利益は15兆円から32兆円に倍増し、ため込み金(内部留保)は142兆円から229兆円に膨らみました。労働法制の規制緩和による正社員の非正規雇用への大規模な置き換え、下請け単価の買いたたきなど中小零細企業へのしわ寄せで国民から富を吸い上げた結果です。

 税制や社会保障による所得再分配のゆがみも見過ごせません。来年度の税収見込みは85年の水準まで下がっています。GDPが今の6割しかなかった当時さえ法人税収は12兆円あったのに、来年度は6兆円と半減の見通しです。他方で当時はなかった消費税が今は庶民の暮らしを痛めつけています。

 庶民には消費税などの税制や社会保障で大幅な負担増を強いる一方、大企業には過剰な減税で奉仕する逆立ちしたやり方が、大企業の利益をかさ上げしています。

 内閣府が昨年12月に発表した「日本経済2009―2010」は次のように指摘しています。自律的な回復のためには「企業部門から家計部門、外需から内需への景気の波及、支出・生産・所得の好循環の実現が鍵となる」―。

大企業に社会的責任を

 経済の正常な循環の障害物となっているのは、大企業による富の「独り占め」にほかなりません。「強い企業をもっと強くすれば、いずれは利益が暮らしに回り、経済も成長する」という旧来の「成長戦略」の破たんは明らかです。

 健全な経済発展への道を開くには、大企業に雇用と中小企業への社会的な責任を果たさせ、応分の負担を求めて、内部留保と利益を国民に還元させることです。同時に社会保障を修復・拡充し、これらを通じて内需を温め、経済の正常な循環を取り戻すことです。


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