2010年2月15日(月)「しんぶん赤旗」
社会リポート
ヘリパッド計画 沖縄・東村高江
被害住民を提訴とは
鳩山政権 自公と同じ米軍優先
「豊かな自然と静かなくらしを守りたい」。沖縄県国頭郡東村高江で、日米両政府の米軍ヘリパッド(離着陸帯)建設計画に反対して、現場で抗議と監視の座り込みを続ける住民を「通行妨害」と那覇地裁に提訴した防衛省沖縄防衛局。米軍基地問題をめぐる鳩山政権の姿勢から見えてくるのは―。(山本眞直)
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「住民の理解を口にしながら、その一方で住民を被告席に座らせる沖縄防衛局のやり方はとうてい容認できません。ヘリパッド建設の中止、住民への提訴を取り下げる決議をお願いします」
高江の住民団体、「ヘリパッドいらない住民の会」共同代表の安次嶺現達さん、伊佐真次さんらは4日、沖縄県議会各会派を訪ね、こう訴えました。
怒りの背景
安次嶺共同代表たちの怒りの背景には、鳩山政権の対応があります。
もともとヘリパッド建設計画は2006年に当時の自公政権が、北部訓練場の一部返還に伴う「代替施設」として高江地区に新たに6カ所つくることを米国と合意。いずれのヘリパッドも同地区の集落を取り囲むかたちで配置されています。
住民側は「一部返還でも15カ所も残り、現在でも民家上空を昼夜の区別なく低空飛行する米軍ヘリの騒音や墜落の危険などの被害を受けてきた。そのうえ新たに6カ所もつくられたら生活できなくなる」(県議会各会派への陳情書)と強く反発。現場で抗議と監視の座り込みを続けています。
こうしたなか昨年の総選挙で鳩山政権が誕生。民主党は、沖縄の基地問題で「県民負担の軽減」を選挙公約してきました。高江の住民や県民は「住民の声が国政に届く」と期待を強めました。
しかし新政権のもと、沖縄防衛局は1月29日、高江の住民2人をヘリパッド建設工事を妨害している、として那覇地裁に提訴しました。
失効させず
沖縄防衛局は08年11月、那覇地裁に座り込みの住民ら14人を相手に「通行妨害禁止」の仮処分を申請。同地裁は09年12月、住民の会共同代表2人に通行妨害禁止を命じる決定をしました。
しかし、同決定は、国が本裁判に提訴しなければ共同代表2人への命令は失効するはずでした。この提訴は、自公政権下の沖縄防衛局による「国が住民を司法手続きで排除する前代未聞の弾圧行為」(住民の会、弁護団)を受け継いだものです。
さらに沖縄防衛局は今月1日、「説明会」を開催しましたが、「住民に限る」として支援者ら県民を排除。「北部訓練場の相当部分が返り、県民の負担軽減になる。(高江の住民には)負担をお願いする」と強弁。ヤンバルクイナ、ノグチゲラなど貴重生物の繁殖期が過ぎる7月に建設工事に着工すると通告しました。
「米軍ヘリパッド建設に納得できないという住民を被告席に座らせる鳩山政権の姿勢は偶然ではない。名護市長選で辺野古への新基地建設反対の稲嶺さんが当選しても『斟酌(しんしゃく)しない』と日米合意を優先する姿勢と同一。そこにあるのは『国民の目線』を口にしながら実際には日米安保を優先、住民犠牲を強いる自公政権と変わらない政治体質。そうでなければ提訴は取り下げるべきだ」
伊佐共同代表の鳩山政権への「異議申し立て」です。19日には、1回目の口頭弁論が同地裁で開かれます。
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