2010年2月14日(日)「しんぶん赤旗」
鳩山首相「定昇困難」「内部留保」発言
連合内からも批判の声
“自公政権でも賃上げ要請したのに”
今たたかわれている春闘で注目される「定期昇給」をめぐる鳩山由紀夫首相の発言に対し、民主党最大の支援組織である連合内からも「労働者の気持ちを分かっていない」との声があがっています。
「連合のお考えは理解できるが、現在の経済状況はそう簡単ではない。経営者の皆さんにとって、簡単に昇給できる状況ではないと思う」
鳩山首相は1月26日夜、連合が定期昇給確保を求めていることについて記者の質問に、こう答えました。
定期昇給(定昇)とは勤続年数などに応じて給料が上がること。「賃金カーブ」ともいわれ、労働者と家族の人生設計の基盤となっているものです。
経団連に「理解」
ところが、日本経団連は1月に出した経営労働政策委員会報告で「総額人件費の抑制」を理由に、ベースアップ(賃上げ)どころか「定昇の凍結もありうる」と賃下げをねらう異常な姿勢を打ち出しました。首相発言はこの経団連の立場に理解を示したと受け取れるものでした。
財界の姿勢に対し連合は、鳩山発言と同じ日の朝に行われた経団連とのトップ会談で古賀伸明会長が「定期昇給の確保・賃金カーブ維持は最低限の方針であり、ここに手を付けることは労使関係を揺るがすことになる」と強調したばかりでした。
鳩山発言を聞いた連合加盟の産別組合の幹部は「耳を疑った。経団連とのトップ会談当日にする発言か。労働者の気持ちを分かっていない。KY(空気が読めない)にもほどがある」と憤りを抑えきれない様子です。
連合は翌27日、「首相が定期昇給を軽視するかのような発言をされたとすれば残念」と官邸に伝えました。官邸からは「懸念は理解した。与党議員の質問で首相に発言の真意をただす」と返答。さっそく同日の参院予算委員会で辻泰弘議員の質問に首相が「すでに経営側が主張していることを単に紹介しただけ」「自分の立場からどうこう言う立場ではない」と弁明しました。
しかし、2008、09年の春闘では当時の福田康夫、麻生太郎首相が経団連の御手洗冨士夫会長を官邸に呼び、内需拡大のために賃上げを直接要請する異例の対応を行いました。産別幹部の一人は「介入しないという立場では弱い。自公政権でも経団連に賃上げ要請をしていたのに」と不満を漏らします。
企業責任問わず
定期昇給問題だけではありません。首相は、大企業の内部留保の還元を求める質問に「企業がそれぞれの状況に応じて経営判断を下すべきだ」(2日)と、自公政権の麻生首相と同じ言い回しで、大企業の社会的責任を問わない答弁に終始。「大企業のぼろもうけを労働者と下請け企業に還元せよ」という世論に背を向けています。
前出の産別幹部はこう語ります。「経済の底割れに歯止めをかけるためにも雇用と賃金を守ることが不可欠であり、政府もその立場にたって行動すべきだ。政治とカネの問題でけじめをつけることも含めて、それができないのなら参院選で厳しい状況になりかねないことを考えるべきだ」と話しています。(深山直人)
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