2010年2月14日(日)「しんぶん赤旗」

主張

イラク戦争検証

違法な戦争だと認めるべきだ


 イラクへの侵略戦争をアメリカと一体で主導したイギリスで、独立調査委員会が戦争の検証を行っています。1月には公聴会で開戦の最高責任者であるブレア前首相が証言し、ブレア政権で財務相を務めたブラウン現首相も3月に証言する予定です。

武力行使を禁止

 来月で7年を迎えるイラク戦争は、世界世論の強い反対を押し切って強行されました。イラク国民はもとより、派兵国の国民にも深い傷を残しています。戦争の性格や開戦の経過を検証することは、二度と悲惨な誤りを犯さないためにも、避けて通れません。

 調査の焦点の一つは、戦争の違法性を認めるかどうかです。開戦前、国連安全保障理事会が採択していた決議はイラク侵攻を認めたものといえず、合法でないとの見方が英政府内にもありました。

 国連憲章は加盟国に紛争の平和的解決を義務づけています。急迫不正の場合の自衛を別にして、安保理の承認なしに武力を行使することを禁止しており、今日の国際法の原則となっています。

 安保理が対イラク武力行使を承認していないなかで行われた戦争は、国連憲章に反した違法な侵略戦争です。イラクが、米国の主張した大量破壊兵器を保有せず、国際テロ組織とも無関係であり、戦争に何の大義もないことも、開戦直後から明らかになっています。

 しかし、ブレア氏は「後悔していない」と強弁し、調査を「陰謀説にもとづく」と非難するなど、戦争を正当化し続けています。

 英紙サンデー・タイムズが1月に行った世論調査は、開戦責任を問う声がイギリスでいまなお強いことを示しました。ブレア氏は意識的に世論を欺いたとみる人が52%にのぼり、4人に1人は、同氏を“戦犯”として裁判にかけるべきだと回答しています。

 イラクに派兵したオランダでは1月、同様の調査委員会がイギリスより一足先に報告を発表し、イラク戦争は違法なものだったと結論づけています。

 アメリカのオバマ政権は、ブッシュ前政権がイラクとの間で結んだ協定にそって、治安権限をイラク軍に引き渡すなど、米軍戦闘部隊の撤退準備を進めています。

 オバマ大統領は2008年の米大統領選挙で、イラク戦争にもともとから反対だったと表明しました。犠牲が大きく、終結の戦略がない、国際社会との関係を悪化させるなど、「政治的リスクが大きい」(大統領候補テレビ討論)というのが理由でした。イラク戦争を違法だと認めたものではなく、この問題は残されたままです。

影落とす戦争

 米国防総省が今月公表した「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)は、イラクとアフガニスタン、国際テロ組織との世界中での戦争をあげ、「戦争勝利」を掲げています。イラクから米軍を「削減」しながらも、今後もイラク軍を訓練・支援する「重要な役割」を果たすとしています。

 イラクでは3月に連邦議会選挙が行われます。長期にわたる戦争が影を落としており、宗派対立の激化や政局の混乱も懸念されています。イラクが独立と安定を回復するためにも、イラク戦争が違法な侵略戦争であることをはっきりさせるべきです。米軍の居座りはけっして許されません。



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