2010年2月10日(水)「しんぶん赤旗」
茨城 3K 空港
開港前1カ月
国内・海外とも 就航予定 1便
3月11日の茨城空港(茨城県小美玉市)開港まで1カ月となりました。県政では日本共産党以外の自民、民主、公明など「オール与党」が橋本昌知事とともにこぞって推進してきました。この空港の「危険」「計画倒れ」「カネ食い虫」の“3K空港”の実態を検証しました。(茨城県・栗田定一)
危険 百里基地と共用
|
茨城空港(国営)は、航空自衛隊百里基地の軍民「共用」化事業として計画されました。F15戦闘機や偵察機が配備される百里基地では実戦訓練や在日米軍の再編に伴う日米共同訓練が行われます。所属機の墜落事故や機体トラブルも起き、県民は日常的な不安と危険、騒音にさらされています。
これまで同基地には滑走路が1本しかなく、基地の拡張に反対している住民の私有地や“一坪運動地”が誘導路を「く」の字に押し曲げ、基地機能を不完全なものにしてきました。
民間機乗り入れに対応するとして、従来の滑走路の西側に新滑走路を建設。2本目の滑走路が、のどから手が出るほど欲しかった自衛隊側にとって“渡りに船”の事業でした。
従来の東側滑走路のかさ上げ工事中には、新滑走路が戦闘機の発着訓練に使用されました。防衛省担当者は日本共産党の塩川鉄也衆院議員の問い合わせに、東側滑走路の工事により大規模な「タイプII」の日米共同訓練が可能になったと認めています。税金で新設された西側滑走路は管理権、所有権とも防衛省側に移されます。「共用」化の名で基地機能が増強されたのです。
通常の2本の滑走路の間の間隔は300メートルですが、ここでは210メートルと狭く(図)、新滑走路にILS(計器着陸装置)が設置できないことから安全性に疑問の声が投げかけられています。軍事上、構造上の両面から危険な空港です。百里基地反対同盟の梅沢優さん(60)は「自衛隊が望むような軍事専用空港にしてはならない」と指摘します。
計画倒れ 1日12往復のはずが
茨城空港は当初札幌、大阪、福岡、那覇の四つの国内路線に合わせて1日12往復の就航を想定。年間需要客を81万人と見込んで着工されました。
しかし、定期便の就航が決まっているのは、韓国のアシアナ航空のソウル便と、スカイマークの神戸便それぞれ1日1往復のみで、県民批判が高まっています。
利用客の需要想定について国交省担当者は「かなり外れた。責任がないとはいえない」と釈明するものの「せっかくつくった空港。いかに利用していくか」と強気の姿勢です。
2008年9月の県議会で橋本知事は「昨今の航空情勢をふまえて当初の青写真を修正する」と答弁。当初計画が破たんしたことを事実上認め、格安航空会社(LCC)対応型空港への転換を打ち出しました。
昨年10月に知事は「国に就航対策に取り組むよう要請していく」「軌道修正については国営空港なので県が判断する立場にない」と答弁。積極的に推進してきた責任を回避する姿勢に転じました。
カネ食い虫 損失分の税金投入も
空港関連費用は本体整備費の250億円をはじめ駐車場やアクセス道路、テクノパーク(臨空型工業団地)整備費、ターミナルビル建設費などの関連事業費を合わせると550億円余にのぼります。
一定の搭乗率を確保できなかった場合、自治体が航空会社に損失を補てんする搭乗率保証制度について、橋本知事は「就航条件として提示された場合は協議したい」という考えを示し、今後の税金投入に含みを持たせました。
さらに県は、乱造した工業団地の売れ残りを大量に抱えて経営危機に陥り、県の財政支援を受けている県開発公社にターミナルビルの建設を委託し「ターミナルビル経営の安定化に必要な支援を行う」とした協定を締結。昨年10月にはターミナルビル運営で年間最大1億円の赤字を抱えるとの見通しを示しました。“死に体”の公社に運営をゆだねる手法にも県民の厳しい目が向けられています。
昨年12月の県議会で日本共産党の大内久美子、山中たい子両県議は所属常任委員会で、空港の利用実績をあげるため県教育委員会が茨城空港を利用した韓国への修学旅行を検討するよう県立高校に通知したことを暴露。「ゆきづまった事業のツケを生徒に押しつけるな」と追及しました。
県議会が実施したアンケートにも「税金の無駄遣いなので中止を」「茨城に空港は不要」「赤字になった場合の責任の所在を明確にして」などの意見が寄せられています。
大内、山中の両県議は「知事と事業推進をあおってきた“オール与党”の罪は重くこれ以上の税金投入は許せない。12月の県議選で、こんな県政でいいのかと訴えていきたい。空港の運用中止と新滑走路を自衛隊や米軍に使わせない運動とともに基地そのものを撤去させるたたかいを県民とともに進めていきます」と話しています。