2010年2月7日(日)「しんぶん赤旗」
政党考
「政界再編」目指す みんなの党
「構造改革」派の糾合狙う
「自民党には不満がいっぱいだが、民主党にも不安がいっぱい」―。自民党を離党した渡辺喜美元行革担当相が代表を務める「みんなの党」が、こんな掛け声で無党派層の支援を訴え、一部世論調査で支持率を伸ばすなどしています。
「みんなの党」とはどんな政党なのか、みてみました。
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渡辺氏は最近出版した自著『民主党政治の正体』で、「『民間にできることは民間に、地域にできることは地域に』という構造改革を」と強調。「中途半端に終った『小泉・竹中路線』の失敗を乗り越えた真の本格的改革路線を構築」することが「大事な本質」だと述べています。同党議員の一人は「(みんなの党は)小泉構造改革路線の唯一の継承者、郵政民営化の巻き戻しに反対する党」と語るなど、「構造改革」路線を徹底するというのが、党の基本方針です。
昨年の総選挙「マニフェスト(政権公約)」では、「地域主権型道州制を導入」と掲げ、「国の中央省庁の役割は、外交・安全保障、通貨、マクロ経済、社会保障のナショナルミニマムに限定し、大幅に縮小・再編」と主張。「郵政民営化の基本骨格は維持」としています。
また、「成長なくして分配なし」(渡辺氏・前書)として、「強く伸びる企業を助け、時代の流れについていけなくなった弱い企業、能力の低い経営者を市場から退出促進する…伸びる産業、強い企業に、雇用、人材を移転促進していく」としています。
「法人税の減税」を掲げる一方、労働分野では「正規・非正規社員間の流動性を確保」と不安定雇用をすすめる立場に立ち、「製造業への労働者派遣については…見直しについて一年以内に結論」(マニフェスト)と、派遣法抜本改正には明確な態度を示していません。
また「将来的な増税を一切認めないという立場は、我々もとらない」として消費税増税を容認しています。
議会「改革」では、衆議院議員定数を「180減」として単純小選挙区制を志向し、「将来的には憲法改正時に衆参統合による一院制を実現」と、権力集中型の「強権国家」づくりを唱えています。
安保・外交政策ではどうか。「日米同盟基軸」「米軍再編への協力」を明記。米軍普天間基地の「移設」問題では、民主党が「県外・国外移設」を掲げたことを、「パンドラの箱を開けた」(江田憲司幹事長)などと批判し、辺野古「移設」を容認しています。また、自衛隊海外派兵について「しっかりとした原理原則を定める法律を策定」と「派兵恒久法」の制定を主張しています。
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同党は昨年の総選挙直前の8月8日に結党。「結党宣言」では「政権交代後の更なるステップとして…『政界再編』を究極の目標とする」とし、「政界再編の荒波の中で、政党横断的に改革派を糾合する『触媒政党』」と、自らの役割を定めています。
渡辺氏は小泉「構造改革」の徹底を主張してきた自民党の中川秀直元幹事長との対談(『Voice』2月号)で、「いま自民党に必要なのは新旧分離再生」だとして「改革」派が「『新自民党』をつくって政界再編をやるのが正しいシナリオ」と述べる一方、民主党側にも「自民党を完膚なきまでに潰したあとは、おそらく純化路線が始まって」いくとして、分離・再編を期待し「そのときこそ、『みんなの党』の出番」とのべています。
結局この党は、「政界再編」の名で、自民党や民主党に散らばっている「構造改革」推進勢力を糾合し、「改革」路線の巻き返しをはかろうとするものです。しかし、これは自公政権に退場の審判を下した国民の意思に真っ向から逆行するものであり、深い矛盾を避けられないでしょう。(中祖寅一)