2010年2月6日(土)「しんぶん赤旗」
民主党「個所付け」内示問題
国会軽視の行政私物化
利益誘導政治を貫徹
国会では、5日から2010年度予算案に関する衆院予算委員会での基本的質疑が始まりましたが、民主党による“国会軽視の行政私物化政治”ともいうべき重大問題が浮上しています。
道路など公共事業ごとの予算配分額などのいわゆる「個所付け」関連情報が、民主党から自治体側に“内示”されていた問題です。
与党時代の自民党も、国会議員が予算成立後に「個所付け」情報を、主に自身の選挙区内の自治体に知らせるなど、予算獲得の“実力”を誇示し集票や政治献金集めに利用してきました。
「考え方が逆」
今回、民主党は、来年度予算案が審議入りもしていない1月末に、同党都道府県連を通じて同年度分の「個所付け」情報を自治体向けに“内示”したのです。一部自治体が記者会見を開いて内容を明らかにしたほか、各紙がいっせいに「個所付け」情報を報道し、周知の問題となりました。
“内示”された予算配分先のなかには、国土交通省が「一時凍結」を予定していた国直轄の道路建設事業が、地方の陳情を受ける形で“復活”したものが含まれています。
野党が4日の衆院予算委員会理事会で内示文書の提出を求めて紛糾すると、同日の委員会冒頭で、平野博文官房長官と、「個所付け」情報を民主党に流したとされる馬淵澄夫国交副大臣が釈明に立つ事態に発展しました。
この問題の何が重大なのでしょうか。
日本共産党の笠井亮議員は3日の予算委理事会で、「民主党は野党時代、国会での予算審議に道路など公共事業の実施場所の『格付け』と配分額を出すように求めていた。与党になったら、国会に出すのではなく、党のルートで情報を自治体に出すというのでは、考え方が逆だ」と強調しました。
実際、馬淵氏自身、野党時代の昨年2月の国会で、自民党政府に対し「個所付け」関連資料の提出を繰り返し要求していたほか、12月14日の国交副大臣としての会見でも直轄国道の予算配分について「国会の審議に資する形で、一定程度、(予算を配分する)個所を提示したい」と述べていました。馬淵氏は今回の事態をいったいどう説明するのでしょうか。
一貫して扱う
同時に重大なのは、新政権発足後、「政治主導」の名のもとにつくられた、地方からの陳情を民主党幹事長室が一元的に受け付けるというシステムに組み込まれていることです。
“小沢詣で”とも揶揄(やゆ)されたこのシステムは、公共事業関連の陳情を民主党の都道府県連を通じて小沢一郎幹事長が指揮する幹事長室に集約し、同室が実現すべきだと判断した事業について政府に要望し、実現を図る仕組みです。今回の都道府県連による「個所付け」“内示”は、民主党が陳情から予算配分までを一貫して扱うことを狙ったものだといえます。民主党による行政を利用した利益誘導政治です。
民主党の津村啓介衆院議員(岡山県連代表)は、岡山県の業界向け地方誌『おかやま財界』1月20日号で、「新しい時代の国の出先機関は与党の地方組織であるべき」「陳情一元化ルールを徹底的に浸透させることが県連代表としての使命」だとまで語っています。
今後の予算委員会の審議では、“内示”された「個所付け」関連情報を政府に提出させるとともに、その中身について解明する必要があります。(林信誠)