2010年2月6日(土)「しんぶん赤旗」

ハイチPKO派遣決定

空中給油機 初の海外任務


 政府は5日の閣議で、大地震で被害を受けたハイチに国連平和維持活動(PKO)の一環として陸上自衛隊の施設部隊約350人を派遣する実施計画を決定しました。

 北沢俊美防衛相は自衛隊に派遣命令を出し、海外派兵を専門とする陸自中央即応連隊(宇都宮市)などの第1陣約160人は6日に出発。早ければ8日未明(現地時間7日昼)にもハイチに到着します。陸自第5旅団(北海道帯広市)を主軸とする本隊は、今月下旬から順次現地入りする見通しです。

 また、陸自部隊の輸送や補給のために海上自衛隊約540人、航空自衛隊約200人が動員されます。

 陸自は、首都ポルトープランスに駐とんする方向で調整し、仮設住宅の建設に必要ながれきの除去や整地作業などを行うとしています。武器は拳銃、小銃、機関銃を携行します。機材は、油圧ショベルやブルドーザー、トラック、軽装甲機動車など約150両。陸自部隊の輸送や補給のための艦船や航空機で、KC767空中給油機が海外で初めて実戦任務に参加します。

 政府は、ハイチでは「国際平和協力法」で規定する「武力紛争が発生していない」ことなどをあげ、PKO5原則に抵触しないとしています。

 派遣期間は当面、11月末までの約10カ月としています。自衛隊のPKO派遣は7回目で、1992〜93年のカンボジア(約600人)、2002年〜04年の東ティモール(約690人)に次ぐ大規模派遣です。PKOとして自衛隊が中南米に派遣されるのは初めてです。

 政府は既に、自衛隊の医療チームも参加する国際緊急援助隊を派遣しています。

解説

なし崩し派遣に疑問

 政府は1月25日にハイチPKO(国連平和維持活動)への自衛隊参加を決定してからわずか12日後の6日、第1陣を出発させます。この間、政府は武力紛争の有無や中立性、受け入れ国の同意といったPKO5原則との関係について一度も説明を行ってきませんでした。

 5日に閣議決定されたハイチPKO実施計画は、ハイチでは「武力紛争が発生していない」としています。しかし、過去には政府自身、5原則を充足するかどうかについて「議論がありうる」としていました。実際、ハイチではこれまでに、PKO要員57人が任務遂行中に死亡しています。

 大規模災害などでの援助活動は急を要します。しかし、被災者の生命に直接かかわる国際緊急援助隊に、自衛隊の医療援助隊がすでに参加しています。

 今回、派遣される部隊の任務は、援助活動の初期段階である医療や救援などの次の段階である復旧活動です。しかも、丸腰の医療部隊とは異なり、武器を携行します。だからこそ、慎重な対応が求められます。

 重大なのは、海外派兵を主任務とした中央即応連隊が先遣隊として乗り込み、部隊や装備の輸送に小牧基地所属のKC767空中給油機が海外で初の実戦任務に就くことです。同機の配備にあたっては、自衛隊機の航続距離をのばし、海外派兵能力を高めるものだとして強い懸念の声があがっていました。(竹下岳)


 ハイチPKO 2004年2月、アリスティド大統領派の武装勢力と反大統領派による対立で首都ポルトープランスが無法状態に陥る中、アリスティド大統領が首都を脱出。国連安保理決議1529に基づき、米・仏・カナダなどの暫定国際部隊(MIF)が派遣されました。同年4月20日、決議1542に基づき、MIFの権限を受け継ぐ国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)が設立されました。要員は軍人・警察あわせて約9000人。



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