2010年2月5日(金)「しんぶん赤旗」

熊本 荒瀬ダム撤去へ

民意が知事を動かした

政府は財政支援を急げ


 「撤去」の民意がついに知事を追い詰めました。約55年間にわたり、水害や水質汚濁、悪臭、放水時の振動で流域住民を悩ませてきた熊本県の荒瀬ダムが撤去されます。3日の蒲島郁夫知事の「撤去」表明。住民を翻ろうした1年8カ月に知事は「申し訳なく思っている」と陳謝しました。

 前知事の撤去方針を撤回し蒲島知事が「存続」を表明した直後から、県民・流域住民らは度重なる集会と県への要請行動を繰り返し、昨年11月には900人規模の集会を開催するなど、粘り強い「撤去」運動を続けてきました。

 この声に反し続けることはできず、知事は、「存続」の方針は変わっていないとする一方で、国の支援があれば「撤去」する、との考えも示していました。

 昨年の衆院選前、民主党の菅直人氏(現副総理)が“撤去への財政支援”を表明したことなどを受け、知事は昨年10月、国に撤去に向けた財政的・技術的な支援を要請しました。

 しかし、先月14日、前原誠司国土交通相は知事に対し、「撤去資金の直接的な支援はできない」と回答。他方で、ダム「存続」の前提となっていた発電用の水利権についても「今年3月末で失効し、別の水利権が必要だ」と表明しました。

 結果として知事は「存続」「撤去」いずれも進退極まっていました。今回、知事は「ダム存続の前提が崩れた」「県政の混乱が長期化する」として、撤去を決意しました。

 しかし、「県政の混乱」は、知事就任直後に圧倒的な民意に反し、ダム「存続」にかじを切ったことに原因があります。真剣な反省とともに、「2年」という期限を設けるのではなく、ただちに撤去に着手すべきです。

 同時に、民主党は選挙前の発言に責任を持ち、県民・流域住民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、撤去に向けた、国の財政的支援を行うことが早急に求められます。



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