2010年2月4日(木)「しんぶん赤旗」
前英首相 再喚問も
イラク侵攻正当化に批判
独立調査委公聴会
彼の判断は間違いだ―。イラク侵攻を決断したブレア前英首相のイラク戦争独立調査委員会公聴会での証言に批判があがっています。同委員会がブレア氏を再喚問するとも報じられています。(ロンドン=小玉純一)
1月29日の公聴会。ブレア氏は自らの参戦判断の正当化を試みました。「イラクのフセイン大統領は『怪物』であり、世界の脅威だ。政権打倒で世界が安全になった」。極めて単純な論法で内容は恣意(しい)的でした。そのうえで「米国と歩むことが正しかった」と主張しました。
オブザーバー紙社説は、証言は「間違いだ」と非難。イラク参戦で「英国がいっそうテロ攻撃の対象となり」「中東はより安全でなくなり」「イランをつけあがらせ、イランの軍縮を困難にした」と反論しました。
調査委はブラウン現首相が「紛争の教訓を引き出す」として昨年7月に設置。元官僚のチルコット調査委委員長は「(委員会は)裁判ではない。有罪か無罪かを決められない」と述べています。
その委員長が6時間にわたる喚問の最後にブレア氏に聞いています。「後悔は無いか」。ブレア氏は「責任は感じるが、フセイン打倒に後悔は無い」と答えました。
調査委に対し、「ブレア氏が大量破壊兵器の証拠に関し議会を欺いたか」など、「国民の多くが望んだほどには率直に質問しなかった」(フィナンシャル・タイムズ紙)との指摘も出ています。
公聴会ではマイケル・ウッド外務省首席法律顧問(侵攻当時)がイラク侵攻を国際法違反と考え、ゴールドスミス法務長官(同)も当初、国連安保理決議1441では侵攻を正当化できないと考えていたことが、それぞれ本人の証言で明らかになりました。
調査委は、「侵攻の合法性に関するブレア氏の証言に特に関心を払っている」と伝えられ、5月6日実施が有力な総選挙前までに同氏を再喚問すると報じられています(ガーディアン紙1日付)。
チルコット委員長は侵攻の「合法性を含めて調査する」と表明してきました。ただ調査委員は歴史家、元外交官などが占め、法律専門家を欠いており、合法性について判断しない可能性も指摘されています。他方、イラク派兵国オランダの独立調査委員会が1月12日に「(イラク侵攻は)国際法上の合法性を欠く」と報告書を発表したことが調査に影響するとの指摘もあります。
調査委公聴会は昨年11月24日から始まり、これまで外交官、軍司令官など約70人を喚問してきました。ことし中に報告書を発表する予定です。
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