2010年2月2日(火)「しんぶん赤旗」

主張

アフガン問題

いまこそ政治和平への転換を


 8年半におよぶアフガニスタンでの戦争に転機の兆しが表れています。1月28日にロンドンで開かれた国際会議が、アフガン国内の和解を進めるとのカルザイ政権の方針に支援を確認しました。アフガン問題を軍事手段だけでは解決できないとの認識が、国際社会に広がっています。

 戦争を主導する米国はアフガンでの軍事作戦を今後も強める構えで、和平への展望はなお開かれていません。米国がカルザイ政権の和平方針を後押しするなら、米国自身が軍事報復の悪循環に終止符を打ち、政治的和平に足を踏み出すことが必要です。

米は軍事作戦を強化

 約70カ国が参加した国際会議は、アフガン治安部隊の強化と外国軍からの治安権限の段階的移譲、アフガン政権主導でのタリバン戦闘員らの国内政治への統合と部族長らによる大和平会議(ジルガ)開催をはじめとする和解プロセスなどの方針で合意しました。

 会議で国連の潘基文(パンギムン)事務総長は、アフガン問題は軍事手段だけでは解決しないと指摘し、「軍事戦略の添え物ではない筋の通った政治戦略」を構築する必要を強調しました。

 武装勢力タリバンへの対応が焦点です。会議は暴力を放棄し、国際テロ組織アルカイダとの関係を絶ち、アフガン憲法の原則を尊重することを条件に、タリバン兵士の統合を進めるとしました。

 カルザイ大統領は昨年11月の就任式で、タリバンとの和平・和解を追求する方針を表明しました。外国軍の撤退が先決とするタリバン指導部の主張は拒否しながらも、交渉を進める立場を鮮明にしています。

 しかし、国際会議はタリバン指導部を和解の交渉相手として位置づけるにはいたっていません。会議は統合のための基金創設を決めました。クリントン米国務長官は、タリバン下級兵士の投降を促進するものだとの立場を示し、米軍もかねてから同様の活動を進めていると述べました。

 オバマ米政権は2カ月前、タリバンの攻勢を抑え込むため3万人の米軍増派を決定し、展開を進めています。クリントン長官は、米軍がタリバンに対する軍事作戦を「非常に強力に進めていく」と強調しました。軍事攻勢とタリバン下級兵士の取り込みによってタリバンを弱体化させることが、政治交渉の条件づくりにもつながるとの認識を示しています。

 しかし、タリバンとの交渉なくして政治解決と和平への展望は生まれません。タリバンを交渉相手として認めることは不可欠です。戦火を抑えることも重要です。軍事作戦の激化はアフガン国民にいっそうの犠牲をもたらし、和平へのさらなる障害になります。

和解の基盤づくりを

 日本政府は、元タリバン兵の雇用など生活を保障する基金に5000万ドル(約45億円)を拠出する方針を示しました。クリントン長官は「非常に大きな貢献だ」と評価しました。

 基金はクリントン長官の言うような米軍の取り込み工作の一環ではなく、和解の基盤づくりでなければなりません。日本がアフガンの和平・和解に大きな役割を果たすという以上、米国に対して政治的和平への転換を求めることも必要です。



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