2010年1月31日(日)「しんぶん赤旗」
主張
武器禁輸「見直し」
軍需産業代弁するのをやめよ
北沢俊美防衛相が武器輸出を禁止した政府の「三原則」について、「見直し」の発言をくりかえし、波紋を広げています。
「武器輸出三原則」は戦争も軍隊も否定した憲法の平和原則にもとづくものです。三原則を厳守すべき現職閣僚が「見直し」発言をくりかえすのは許されません。自公政権を退場させ、平和日本への新しい政治を前に進めたいという国民の願いに根本的に反します。
「死の商人」国家への企て
北沢防衛相は12日の日本防衛装備工業会の新年の会合で、武器輸出三原則について「わが国としては、そろそろ基本的な考え方を見直していくべきだ」とのべました。北沢氏はみずからすすんで問題提起したものだと語っています。
日本防衛装備工業会は軍需産業の中心的な組織です。武器輸出三原則の見直しも求めてきています。そこで防衛相が「見直し」を口にしたことは重大です。鳩山由紀夫首相が「口が軽い」と防衛相を批判し、苦言を呈しましたが、それですむ問題ではありません。
北沢防衛相はいったん「武器輸出三原則」を「守る」といい直したものの、22日の衆院予算委員会ではふたたび「この際いろいろ検討する余地はある」と「見直し」発言をくりかえしています。閣僚が首相の批判を無視する形で「見直し」発言をくりかえすのは異常なことです。
北沢防衛相がここまで「見直し」に固執するのは軍需産業の利益を優先させてのことというほかありません。
北沢防衛相は、自民党政権のなかで7年間にわたり軍事費を削られたため、軍需企業が「撤退」「リスクを負っている」と「たびたび聞いている」と「見直し」発言の背景を説明しました(22日衆院予算委員会)。日本経団連は昨年7月の「防衛産業政策の確立に向けた提言」で、「防衛関係費の減少傾向が続いており…限界」だとのべ「武器輸出三原則等を見直すべき」だといっています。防衛相の発言が財界・軍需産業の代弁であるのは明らかです。
自公前政権は2004年にミサイル防衛に関する日米共同開発・生産に限って武器輸出三原則を適用除外にしました。しかし現状では武器輸出三原則によって軍需産業は世界に武器を輸出できません。
日本の軍需産業のもうけのために武器を外国に売れば、紛争や戦争でその武器が使われ、多くの他国民を殺傷することになります。政府は、もうけさえあがれば他国民の命はどうなってもいいというのか。軍需産業の身勝手な態度と一線を画し、日本を紛争や戦争を助長する「死の商人」国家としないためにも軍需産業の企てにきっぱり反対することが不可欠です。
三原則厳格に守れ
戦後の日本が軍隊と軍需産業がつくる武器で他国民の命を奪っていないことは外交政策を進めるうえで大きな力です。
いま世界では紛争を戦争ではなく、政治的・外交的に解決する流れが本流です。「国際紛争を助長することを回避」し(1976年2月政府統一見解)、「憲法の平和主義にのっとった」(81年2月20日、角田禮次郎内閣法制局長官)武器輸出三原則を厳格に守り抜いてこそ、日本は世界のなかで憲法9条を生かした平和的役割を果たすことができます。