2010年1月30日(土)「しんぶん赤旗」
具体策なく疑惑に触れず
鳩山首相が施政方針演説
鳩山由紀夫首相は29日、衆参両院本会議で、就任後初の施政方針演説を行いました。「いのちを守りたいと願う」などの「理念」を繰り返したものの、暮らしの危機の打開、基地のない平和な日本をつくる道筋など、国民の切実な願いを実現する具体策には、ほとんどふれませんでした。
鳩山首相は、社会保障費の抑制で「国民医療は崩壊寸前」との認識を示しました。しかし、国民の期待を裏切って、すでに廃止を先送りした後期高齢者医療制度についてまったくふれませんでした。一方、国際人権規約における高等教育の段階的な無償化条項については、「留保撤回を具体的な目標とする」と表明しました。
雇用問題では、雇用破壊に対する大企業の責任にはふれず、「派遣労働を抜本的に見直す」と表明。“抜け穴”だらけと批判されている政府の審議会答申案そのままに、「登録型派遣や製造業への派遣を原則禁止する」と述べました。
財源については、2010年度予算案で軍事費を増額し、大企業・大資産家優遇税制を温存しておきながら、「事業仕分け」の成果を誇示しました。
首相は外交について、「日米同盟は、その重要性に変わりがないどころか、東アジア共同体の形成の前提条件として欠くことができない」と、同盟の「深化」を強調。沖縄・米軍普天間基地問題では「本年5月末までに具体的な移設先を決定する」などとし、「移設」先探しに固執する姿勢を示しました。
またハイチでの国連の平和維持活動(PKO)に加わるとし、なし崩し的な自衛隊派兵を表明しました。
議員定数削減に言及
首相は施政方針演説で、自らの偽装献金疑惑の説明を行わず、民主党の小沢一郎幹事長の土地購入疑惑にはまったく触れませんでした。一方、民主党が目指す衆院比例定数80削減を念頭に「議員定数」にはじめて触れ、「見直しの議論」に期待を表明しました。仮に定数削減が強行されると、民主・自民両党で9割以上の絶対多数の議席を独占することになり、民意をゆがめる小選挙区制の害悪はいっそう極端なものになります。消費税増税反対や憲法9条改悪反対の声が国会に届かなくなります。