2010年1月27日(水)「しんぶん赤旗」
オバマ政権1年 中東メディアは
しぼむ期待 軍事的対応に懸念
中東和平実現を外交政策の優先課題に掲げるオバマ米大統領の就任から1年。イランとの対話提案、イスラム世界との「新しい始まり」の呼びかけなどで中東域内に広がった期待は、その後急速にしぼみ、むしろ軍事的対応が前面に出てきつつあることに懸念が強まっています。(カイロ=松本眞志)
カタールの衛星テレビ・アルジャジーラ(電子版)は、オバマ政権1年にあたり「アルカイダは勝利しているのか」と題する論評を掲載。「米国は軍事作戦に対する世界の非難に聞く耳をもっていない」と指摘し、アフガニスタンとパキスタンで軍事活動を拡大するだけでなく、「イエメンでも同じことを繰り返している」と批判しました。
そのうえで「軍事力に傾注する米国の姿勢は、アルカイダへの支持を取り除いて民心を得るという努力を無にするものだ」と断じ、「米軍の無人機によるミサイル攻撃やF15戦闘機の爆音、国土を蹂躙(じゅうりん)する戦車に対する現地の反応を考慮していない」と、米軍の行動に厳しい目を向けています。
サウジアラビア紙サウジ・ガゼットはイラク問題をめぐり、政府中枢を狙ったテロの横行で、オバマ政権が重視するイラク当局の治安能力への疑問が高まっていると指摘。イラン核問題では、オバマ氏が対話路線を事実上断念し、イランへの制裁措置を要求していると報じました。
汎アラブ紙アルハヤトは、イスラエル・パレスチナ問題をとりあげました。同紙は、オバマ氏が就任直後にイスラエルに対しユダヤ人入植地拡大の凍結と和平交渉再開を訴えたものの、ネタニヤフ首相から「経験が浅い」と手玉に取られ、米議会内の親イスラエル勢力の圧力を受けてネタニヤフ政権に「屈した」と分析しています。
また、イスラエルによるガザ攻撃を非難する国連安保理決議をオバマ政権が妨害した例をあげ、「米国は『パートナー(イスラエル)』と中東域内で大規模な策略をめぐらしアラブ諸国を挑発している」と批判、域内での公正な対応を求めました。