2010年1月24日(日)「しんぶん赤旗」

主張

ハイチ大震災

国連と地域の主導で復興を


 カリブ海のハイチで12日に大地震が起きて、半月になろうとしています。国際支援が広がり、日本を含む医療・救援チームが、生存者の救援と被災者支援に日夜を分かたぬ活動を続けています。

想像絶する被害

 ハイチ国民の苦難は察するにあまりあります。最貧国であり、しかも200年来という大地震です。被害の全容を知ることさえ困難です。7万人が埋葬されたとも伝えられますが、正確な数は不明です。推定される死者数にもなお大きな開きがあります。

 全人口の3分の1近い300万人が被災し、家を失った人びとは50万人とも100万人ともいいます。人道支援が広がるなかでも、食料を受け取れるのは被災者の一部にとどまっています。衛生状態は極度に悪く、疫病が懸念されます。水や食料、医療、テントなど人道支援がなお緊急に求められています。今後はさらに、復興に向けた本格支援も重要になります。

 ハイチ国民は、地震だけでなく、歴史的につくられた不公正のツケをも背負わされています。

 ハイチは20世紀、皇帝気取りのデュバリエ父子が過酷な恐怖政治を敷き、富を独占しました。その陰にハイチを「裏庭」とみなす米国の新植民地主義的な干渉がありました。1980年代に民政に復帰したものの、独裁政権の残党らによるクーデターや武装蜂起など混乱が続きました。米国がたびたび軍を派遣し干渉したことも、政情不安に拍車をかけてきました。

 大半の国民は底知れない貧困にあえいでいます。首都ポルトープランスのスラム街には何十万人もの人が住み、ゴミの山では子どもたちがわずかの金に換えられそうなものを探し回っています。武装勢力などによる絶え間ない暴力にも苦しめられてきました。

 2004年からは国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が駐留し、治安の回復などに取り組んできました。しかし、ハイチ政府はぜい弱さを克服できないままにきました。今回の地震で政府機能は事実上崩壊し、救援は国際社会に頼るしかありません。

 国際社会による支援の公正さを確保するためにも、ハイチ国民の自主的な再建努力と長期的な支援の枠組みをつくるうえでも、教育など国民生活の底上げをはかるにも、国連が中心的な役割を担うことが不可欠です。中南米・カリブ海地域の地域協力が拡大している流れを生かす必要もあります。

 国連は米軍に救援隊の警護を委任しました。円滑な支援活動には治安確保が欠かせませんが、軍事力優先でなく、警察力による治安回復こそが望まれます。

 支援が広がるなか、中南米や欧州の諸国から米軍の動きに懸念も表明されています。米軍は1万人規模の兵員を派遣し、首都の空港や港湾も管理下におきました。米軍が自然災害への対処を掲げて世界各地で行動し、中南米では麻薬対策として軍事基地を拡大していることなどをみれば、懸念が出るのも当然です。

国際支援の拡大を

 国連安保理はMINUSTAHの拡大を決め、潘基文(パンギムン)事務総長は復興に向けた支援拡大を各国に呼びかけています。

 日本政府は5億円の人道支援を決めましたが、さらに支援を拡大する必要があります。


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