2010年1月23日(土)「しんぶん赤旗」
ガザ封鎖解除訴え
イスラエルを告発
国際支援団体
がん女子高生入国できず死亡
医療品調達できず最悪の環境
国連などは20日、イスラエルとエジプトに封鎖されているパレスチナ・ガザ地区の住民の劣悪な保健・医療環境を告発する報告書を発表し、封鎖を緩和するよう改めて訴えました。報告書は、ヨルダン川西岸やガザ地区で活動する国連や世界保健機関など80以上の援助団体の総意として発表されたものです。(山田芳進)
ガザ市内で記者会見したゲイラード国連人道問題調整官は「封鎖が地域の医療システムを悪化させ、住民の命を危険に陥れている」と指摘しました。
報告書は、昨年11月、がんを患っていた18歳の女子高校生が、イスラエルの病院で治療する許可を得ながら入国許可が下りずに死亡、許可が出たのは死亡後だった例をはじめ、同月だけで、1103人の患者がイスラエルでの治療を希望しながら、21%の申請が拒否または延期されたと指摘。昨年1年間では、27人(一昨年は46人)の患者が入国許可を待つ間に死亡したことを明らかにしています。
2006年からイスラム抵抗組織ハマスが実効支配を続けるガザ地区では、イスラエルによる封鎖が続き、十分な医療機器や医薬品が調達できず、医師や看護師も最新の医療技術を取得できない状況です。また一昨年の年末から続いたイスラエル軍の侵攻で27病院のうち15カ所、110診療所のうち43カ所が破壊されましたが、イスラエルが許可しないため資材が運び込めず改修もままなりません。
ガザの中枢医療機関であるシーファ病院の新手術棟は06年以来改修工事がストップしたまま。ロイター通信は、同病院の腎臓内科長の、「昨年は人工透析の順番の割り当てを厳しくせざるを得ず、最悪の治療環境だった」という言葉を伝えています。
これに対し、イスラエル外務省報道官は、入国許可は一昨年に比べ25%増えていると言明。「可能な限りガザの住民が医療を受けられるようにしているが、ガザ地区政府が戦争状態を押し付けている」と述べ、封鎖の責任はハマス側にあるとの立場を示しています。